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アメリカ経済

雇用回復の兆し、4つの理由

先週発表された11月の米雇用統計を精査すると、大失業時代の「終わりの始まり」が見えてくる

2009年12月8日(火)17時24分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

 たった一つの経済データに基づいて多くを推測するのは危険だ。だが米労働省が12月4日に発表した11月の雇用統計を見ると、アメリカ経済の先行きは統計の数字以上に明るいと期待していいかもしれない。

 11月の失業率は0.2ポイント減の10%に改善し、非農業部門の就業者数は前月比の1万1000人減にとどまった。エコノミストの予測よりかなりいい数字で、就業者数の減少幅は景気後退が始まった2007年12月以降で最小だ。これは近い将来、雇用が増加するサインである可能性が高い。
 
 単月の統計に基づいて断定的な結論を出すのは愚かだとは重々承知しているが、11月の雇用統計を精査すると、アメリカ経済の未来について楽天的になっていい4つの理由が浮かび上がってくる。

■理由1 就業者数の減少は誇張されてきた

 11月の就業者数の統計は予想よりずっとよかった。労働省は毎月の雇用統計を発表する際に、直前2カ月の数値も修正する。それを見ると、政府がこの数カ月間、雇用市場の弱さを誇張していた傾向がわかる。

 9月の就業者数の減少幅は当初、26万3000人とされていたが、翌月の修正値では21万9000人に。さらに12月4日の発表では、わずか13万9000人に上方修正された。10月の就業者数についても、政府は当初19万人減としていたが、4日の発表では11万1000人減にとどまった。

 つまり、過去3カ月間、政府は就業者数の速報値を出す際に経済回復の強さを過小評価していたことになる。この傾向が続いているとすれば、1万1000人減という11月の就業者数も今後修正され、最終的には「就業者数増」に転じる可能性もある。

■理由2 サービス部門の雇用が強い

 アナリストはよく、製造業と不動産業、建設業の大幅な雇用減を問題にする。確かに、製造業は政治的に重要だし、不動産業と建設業は近年の経済成長を牽引してきた業界だけに、そうした懸念は理解できる。

 だが製造業に関しては、長期的なグローバル化の流れやアウトソーシング、オートメーション化の影響で、経済が回復しても雇用は減少する可能性が高い。不動産業についても、経済危機の元凶となった業界に回復のけん引役を期待すべきではない。

 経済再生を担うのはむしろ、巨大産業であるサービス部門だ。政府機関や医療分野、教育関連など多岐に渡るサービス部門で働く人は、全就業者数の約86%を占める。

 10月の速報値では、サービス部門で6万1000人が職を失ったとされたが、翌月には2000人増に修正。また11月のサービス部門の就業者数は5万8000人増で、2カ月連続の増加となった。

 さらに完全な民間企業のサービス部門に限ってみれば、11月の就業者数は8万6000人増。10月の数値も3万8000人増に修正されている。

■理由3 非正規雇用の増加は景気回復の前触れ

 経済成長は夏に始まったが、成長が2〜3四半期続くまで企業や消費者は信用しない。そうした時期には、どの企業も似たようなプロセスをたどる。

 業績が安定すると、企業はまず従業員の大量解雇を止める。需要が好転すると、新規雇用の代わりにすでにいる従業員の仕事を増やし、生産性向上のための設備投資に資金を回す。この6カ月間、生産性が劇的に向上しているのはそのためだ。

 経済成長がさらに続いても、企業はまだ完全には信じようとしない。この数カ月間の多くの経済活動は、低金利政策や低燃費車の購入補助といった景気刺激策の促されたもの。そのため企業は、需要増に応えるためにフルタイム社員を雇うより、需要が再び冷え込んだ際に解雇しやすい非正規職員を増やしている。
 
 11月の非正規雇用は5万2000人増。サービス部門では7月以降、11万7000人増えている。

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