コラム

ライブ会場が不足する「2016年問題」が、いよいよ表面化している

2016年04月28日(木)18時00分

 昨年11月には、ミュージシャン、能楽師、バレエダンサー、琴古流尺八演奏家など様々なジャンルの表現者が「2016年問題」を訴える会見を開いた(主催:公益社団法人日本芸能実演家団体協議会)。サカナクションの山口一郎が「音楽にはコンサート会場でしか体感できない感動があります。ところが現在は会場確保が難しい状況にあり、このままだと音楽を愛する人達と出会う機会が失われてしまう危機感を持っています」(『ACPC navi』Vol.28)と、たとえ国内のミュージシャンでも会場確保が難しくなっている窮状を語っている。

 この3月末に東京都の舛添要一知事が、馳浩文科相を訪ね、「ホールや劇場が不足している。国と都を含めた首都圏の自治体で情報を共有し、課題を解決したい」と提言。馳文科相は「速やかに協議の場を設置する。実態を調査し、大学に協力を求めていく」と答えている(産経ニュース・3月30日)。約2000人を収容する昭和女子大学人見記念講堂などは今でも時折コンサート会場として使用されているが、もっと使えるホールが大学にあるんじゃないか、そこを使いましょうよ、との算段なのだろう。しかし、大学側が素直に「はい、どうぞ」と差し出すとも思えない。

 一般社団法人コンサートプロモーターズ協会が公表している「正会員による年別事業規模」を見ると、コンサートの入場者数はこの3年だけを見ても、3885万人(2013年)、4261万人(2014年)、4753万人(2015年)と右肩上がりを記録している。ライブの動員が業界を支えている。同協会の「年別基礎調査報告書 平成27年」に発表されている動員数、国内アーティストと海外アーティストをそれぞれ確認すると、国内が前年比114%なのに対し、海外が100.8%とほぼ横ばい。動員数ではなく、公演数で比較すると、国内アーティストが、スタジアム、アリーナ、ホールの全てで前年超えしている一方、海外アーティストでは、スタジアムこそ103.9%(79公演)と前年並みだったものの、アリーナ95.7%(311公演)、ホール89.8%(1041公演)と減ってきている。

 海外アーティスト国籍別公演数の結果には驚く。アジア・オセアニアが206.7%なのに対し、北中米が68.7%、欧州が89.3%と、アジア以外のアーティストの来日公演が減っている現状が浮き彫りになっている。海外のバンドが、アジアに立ち寄らずにオーストラリアに行く、あるいは、日本を外したアジアツアーを敢行する場合もある。この2015年のデータから「2016年問題」を予測してしまうのはやや乱暴だが、会場不足問題によって、更に興行自体が減る可能性があるだろう。需要はあるのに受け入れる会場が用意できない、だとしたら、実にもどかしい。文化事業の多くが何かと2020年に向かうのは致し方ない部分もあるだろうが、この窮状にも目を向けたい。

プロフィール

武田砂鉄

<Twitter:@takedasatetsu>
1982年生まれ。ライター。大学卒業後、出版社の書籍編集を経てフリーに。「cakes」「CINRA.NET」「SPA!」等多数の媒体で連載を持つ。その他、雑誌・ウェブ媒体への寄稿も多数。著書『紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社)で第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。新著に『芸能人寛容論:テレビの中のわだかまり』(青弓社刊)。(公式サイト:http://www.t-satetsu.com/

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務長官、地上部隊使わず対イラン目標達成へ 「数

ワールド

ルビオ氏、ウ大統領の発言「うそ」 ドンバス割譲と安

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感3月確報、53.3に低下 

ビジネス

ドル160円台に上昇、2024年7月以来初 介入警
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊張緩和の兆しか
  • 3
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思われるドローンの攻撃を受け大炎上
  • 4
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRAN…
  • 5
    日本経済にとって、円高/円安はどちらが「お得」な…
  • 6
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 7
    ウィリアム皇太子が軍服姿で部隊訪問...「前線任務」…
  • 8
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 9
    ニュースでよく聞く「東京外国為替市場」は、実際は…
  • 10
    アメリカのストーカー対策、日本との違いを考える
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 3
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 7
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 8
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story