コラム

トランプ起訴は「トランプ時代」への回帰を告げるファンファーレだ

2023年04月05日(水)09時19分

「 トランプ起訴」を報じるニューヨーク・タイムズ紙(3月31日) DAVID DEE DELGADOーREUTERS

<トランプは法廷で無罪を勝ち取り、メディアの注目を一身に浴び、再び共和党内で唯一の権力者に返り咲く公算が大きい――起訴が政治的追い風となり、トランプ劇場の再来が迫る理由とは>

ドナルド・トランプ前米大統領の悪行は、アメリカ史上「初」を生み出し続けている。既に2度弾劾された初の大統領だが、今度は刑事事件で起訴された初の大統領経験者になった。

起訴に対するトランプの政治的な反応を見れば、この一件がトランプの立場をむしろ強化する可能性も考えられる。2024年の大統領選に向けた動きが本格化しつつある今は、特にそうだ。トランプは訴追後の声明でこう言った。

「この魔女狩りはジョー・バイデン(大統領)への強烈な逆風となるだろう。アメリカ国民は急進左派の民主党の所業を完璧に理解している。われわれの運動、われわれの党は強く、団結している。まずアルビン・ブラッグ(起訴を求めた検事)を倒し、次にジョー・バイデンを倒し、ひねくれた民主党員を全員公職から追い出すだろう。アメリカを再び偉大にするために!」

今回の起訴を受けて、トランプ支持者は献金や政治活動にさらに力を入れ、民主党の政治目標を破壊することに熱を上げるだろう。16年の共和党大統領候補予備選でトランプと争ったテッド・クルーズ上院議員も、今回の起訴を「司法制度を武器化する破滅的エスカレーション」と非難した。

これでトランプが共和党の大統領候補指名を獲得する可能性は一気に高まった。党派色むきだしの民主党エリートによるやりすぎ(という共和党側の反発)が、共和党を一致結束させたからだ。かつて民主党の「陰謀」への反発がトランプ時代の隆盛につながったのと同じだ。

共和党内でトランプの支持率が最も高かったのは1回目の弾劾裁判の時期だった。共和党がトランプの下に再結集する可能性は十分にあると、私は考える。トランプが再びメディアの注目をさらい、人々の関心を独占することで、フロリダ州知事ロン・デサンティスら党の指名を狙うライバルたちは脇に追いやられそうだ。

また、不倫相手とされる元ポルノ女優への「口止め料」支払いという「トランプの犯罪」の中では微罪にすぎない嫌疑に焦点が当たることで、迷いを見せていた共和党のトランプ支持派は狡猾な民主党に対する怒りを強め、かつて自分たちが投票した大統領がアメリカ政府に対する反乱を扇動したという不快な事実を無視できるだろう。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏インフレは当面2%程度、金利は景気次第=ポ

ビジネス

ECB、動向次第で利下げや利上げに踏み切る=オース

ビジネス

ユーロ圏の成長・インフレリスク、依然大きいが均衡=

ビジネス

アングル:日銀、追加利上げへ慎重に時機探る 為替次
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story