コラム

メドベージェフは後継本命から後退...プーチンが絶大な信頼を置く「影の実力者」とは

2022年10月19日(水)17時22分

2. ニコライ・パトルシェフ(安全保障会議書記)

221018p18_PPT_03.jpg

MAXIM SHEMETOVーREUTERS

プーチンが権力を掌握して以来ロシアを牛耳ってきたシロビキ(軍や情報機関のエリート)の1人。71歳という年齢を考えれば、権力を握ったところで一時的だろう。だが安全保障会議書記のパトルシェフはロシアでプーチンに次ぐ重要人物であり、安全保障分野での経歴は完璧だ。

というより彼はほかの分野を知らない。75年にKGB(旧ソ連国家保安委員会)高等学校を修了し、レニングラード(現サンクトペテルブルク)で防諜(ぼうちょう)活動に携わり、カレリア共和国保安相を経てロシア連邦保安局(FSB)へ。

98年からはプーチンの成功に便乗する形で出世した。プーチンの後任として大統領監督総局局長になり、プーチンがエリツィン大統領の第1副長官だったときはその下で働いた。プーチンのFSB長官時代には副長官を務め、プーチンが首相になると長官に昇進して10年間FSBを統括した。プーチンの人気と威光を高めた第2次チェチェン紛争では最重要の参謀だった。

08年以来、現職。プーチンは定期的に閣僚を入れ替えるが、この男だけは安泰らしい。パトルシェフは事前にウクライナ侵攻計画を知らされていたごくわずかな側近の1人だと、内部筋はみる。プーチンの身に何かあった場合、権力を移譲されるのは憲法の定めた首相ではなくパトルシェフだと予想する記者もいる。

だがパトルシェフはプーチンに輪を掛けた強硬派。プーチンが侵攻を大誤算と見なすようになれば、その権勢も揺らぎかねない。西側がウイルスを合成してパンデミックを引き起こしたと、彼は本気で信じている。そうした研究所がウクライナにあると進言したために、プーチンが侵攻に踏み切った可能性もあるのだ。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story