コラム

なぜだか惹き込まれる、スマホで撮ったパリの日常

2019年05月08日(水)11時25分

From Stéphane Arnaud @frommywindows

<どんな非日常さえ日常化してしまうパリには欠点もあると、通信社AFPでフォトエディターを務めるステファン・アルノーは言う>

詩的でどこかほっとさせる写真が、どういうわけか、人を惹き込んでしまうということがしばしば起こる。今回取り上げるInstagramフォトグラファーも、そんな作品を撮り続けている1人だ。

パリで生まれ育ち、今もパリで暮らす46歳のフランス人、ステファン・アルノー。20年以上、写真コミュニティーの中で生きてきたが、本来は写真家ではない。フォトエディターとして活動し、現在はフランスの通信社AFP(Agence France-Presse)のパリの本部で国際写真部のチーフエディターを務めている。

作品の多くはパリをはじめとするヨーロッパの街並み、あるいは旅先で出くわした光景を切り取った、一般にストリートフォトグラフィーと呼ばれるものである。基本的に全てスマートフォンで、その多くはHipstamatic(ヒップスタマティック)というアプリを使って撮影しており、リフレクションも多用している。

他のカメラを使わず、なぜスマートフォン――実質的にはiPhoneであるが――を使うのか、という筆者の問いに、アルノーはこう答える。常に持ち運ぶことができ、カメラがなくてシャッターチャンスを逃さなければならないフラストレーションから離れられるから、と。そうした自由な感覚とスマートフォン特有の目立ちにくさがインスピレーションを加速させ、場所や時間に関係なく、より写真を撮る気にさせるのだという。

彼にとって写真はテクニックではない。写真は感情の表現であり、その感覚を通して捉える構図、決定的瞬間、そして写真の持つ自発性であるという。アルノーによれば、それらは不完全さを内包するが、そうしたものこそがしばしば写真のソウル(魂)と言われるものなのである。

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

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