コラム

【動画】生き物のような耽美的空間 ダンスそのものを超えようとする映像作家

2018年06月20日(水)11時00分

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だが、有名なコリオグラファーたちの作品を何年かかけて分析し、研究した。そしてダンスカンパニーとの撮影では、コリオグラファーと密に話し合うという。ちなみに、彼に極めて大きな影響を与えたコリオグラファーは、モダンダンスの伝説的アイコン、故ピナ・バウシュだ。作品の中にもそれが読み取れる。

ダンサーたちに対する彼の考え方も、ヴァスタの作品を理解する上で重要になってくる。彼が作品でフォーカスしたいのはそのムードと演出だが、自身の作品づくりの場合でも、独りよがりではない。ダンサーたちとのコラボレーションとしての、ムードと演出だ。そして、それゆえヴァスタは、「作品づくりで最も重要なことは、ダンサーの創造性を見つけ出すこと」と語る。

イタリアの古典とルネサンスの美学に子供の頃から影響を受け、無意識かもしれないが、常に耽美性が作品の中枢に流れ入るヴァスタ。しかし、その信念は多くのアーティストと同じく、時にポリティカルである。愛や風景でさえ、そうなるという。

そして、Ludovico Schillingとコラボレーションした、反人種差別のメッセージが組み込まれた作品「Dance Against Racism」を作った理由について聞くと、ヴァスタはこう答えた。

「個人にさえ政治的な義務がある――とりわけ現在は。世界で何が起こり、我々の行動がどんな影響を生み出すかを知らなければならない。アートも人間性(Human Condition)について、それが政治的であろうがなかろうが、何かを語っていくべきだ」

ヴァスタのダンスと映像の模索は、ある種まだ始まったばかりなのである。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Angelo Vasta @angelo_vasta

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プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

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