コラム

新学年を迎えたアメリカで学校、学区によって再開判断がバラバラな理由

2020年08月18日(火)14時45分

新学年を前に、安全なコロナ対策などを求めてデモを行うロサンゼルスの学生グループ Mike Blake-REUTERS

<完全リモートか、対面式とリモートのミックスか......それぞれの学区で事情が大きく異なるために再開判断は全く一様ではない>

アメリカの教育制度は「秋入学」です。ですから8月下旬から9月初頭にかけて、全国の学校が新学年を迎えます。生徒としては、通常2~3カ月にわたる夏休みから学校に戻ることから、この時期のことを「バック・トゥ・スクール」の季節などと言います。

ですが、今年は必ずしも全米の子供たち全員が「バック」はできない雲行きです。現状ということでは、6月までの休校分を取り戻すとか、学事暦の関係ですでに学期がスタートしている学区があります。また学校再開へ向けて最終決定を行った学区もある一方で、決定はしたが最終判断に変更の余地がある学区、そして今でも検討が終わっていない学区もあります。

何を判断するのかというと、「イン・パーソン」つまり対面授業を行うかどうかという問題です。

学区というのは、多くの場合は市町村単位で作られている教育委員会の所轄範囲のことです。90年代以降は、少なくとも「スタンダード」という各学年の到達目標について全国統一基準が設けられましたが、それ以前は指導内容も指導法も各学区でバラバラでしたし、今でも独自色は強く残っています。

対面授業をしない場合は、遠隔(リモート)授業となります。全国一律ではありませんが、この対面授業かリモートかというのは、まず生徒の保護者が選択できるという州や学区が多くなっています。一律に決めるのではなく、子供や家族の健康に関する保護者の考え方でチョイスさせるという考えです。

「ハイブリッド」も学区によってさまざま

選択肢ですが、学区にもよりますが「オール・リモート」か「イン・パーソン」かという場合もありますが、これは少数派で、「オール・リモート」か「ハイブリッド」のどちらかを選ぶというのが一般的です。ちなみに「オール・リモート」というのは、必ず選べるようになっているケースが多いです。

一方の「ハイブリッド」というのは、対面式とリモートをミックスした形態ですが、学区により色々なパターンがあります。

・科目により「イン・パーソン」と「リモート」が決められているケース。
・生徒をグループ分けして、週毎に「登校する週」と「リモートの週」が交代で発生するケース。
・曜日でグループが入れ替わるケース。

などさまざまです。グループに分けるのは、生徒(保護者)に多様な選択をさせるだけでなく、教室内、校舎内の生徒数を州などのガイドライン(定員の33%とか25%)以内に抑えるために、そうしている面もあります。

<関連記事:バイデン陣営はこれで「ターボ全開」? 副大統領候補ハリス指名の意味

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実

ビジネス

アングル:中国の住宅買い換えキャンペーン、中古物件

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story