コラム

離婚後の共同親権は制度改定だけでは不十分

2019年10月08日(火)17時40分

2つ目は、ルールを厳格に決めるということです。共同親権というのは、すでに夫婦ではなくなった、そして離婚の過程で利害衝突を調整してきた当事者達によって公正に運用されなくてはなりません。反対に、ルール違反が起きた際には厳格に対処する規定も必要です。例えば、自分が担当でない日に子供を連れ去るような問題には、厳重な罰則を設定しつつ、そのような事態を防止するために周囲の理解を進める仕掛けが必要です。

3つ目は、離婚後の新しい配偶者の問題です。日本でも、もちろん血の繋がらない親子関係を立派に築いてお子さんに愛情を注いでいる親御さんもたくさんいます。ですが、社会として「血の繋がりがない」場合に、愛情が注げないことへの「許容」がまだ残っているように見られます。

極端な例は、近年問題になっている「再婚カップルにおける連れ子への虐待」です。もちろん、明るみに出れば厳しいペナルティを課すようになっていますが、社会として防止策は十分とは言えないように思います。

連れ子に対して「冷淡な」カルチャー

例えば、現在の離婚後の運用においては、親権のない親に面会権があったとしても、「その親が再婚したら面会権を遠慮する」とか「再婚相手が、前の婚姻における子供と面会することに対して不快感を表明してもいい」あるいは「再婚相手の前の婚姻による子供については、自分は血の繋がりがないので親としての責任を尽くさないでいい」といったカルチャーが、まだまだ残っているようです。

共同親権がうまく機能しているケースでは、ほぼ100%「自分のところに子供が来る日には、再婚した新しい配偶者も一緒にその子に愛情を注ぐ」ということが実行されています。社会的にそのように誘導するようなカルチャーが必要ではないでしょうか。

いずれにしても、共同親権というのは、その制度を取り巻くカルチャーについても、アップデートを要求します。子どもを1つの家族に囲い込むのではなく、2つの家族を行き来する中で、それぞれの家族が愛情を注ぐ、そしてそれができないというウォーニングが出た時には、制度的に子どもが救済される仕掛けを、制度とカルチャーの両面で用意することが必要です。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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