コラム

銃乱射事件が続くテキサス州で、規制緩和が進むのはなぜか?

2019年09月03日(火)18時20分

学校の駐車場に停めた車に銃と弾薬を置きたいというのは、自分が乱射事件を起こしたいからではなく、万が一乱射犯に襲われたら対抗するためなのです。教会での礼拝時に銃を携帯したいのは宗教がらみのヘイト犯に襲撃されるのが怖いからです。

例えば、現在ワシントンで議論となっているのは、銃保有の「バックグラウンド・チェック」の強化という政策です。精神病歴や犯歴のある人物に銃が渡らないように、現在あるシステムの「抜け道」をふさぐ政策が検討されています。

ですが、トランプ大統領をはじめ、共和党の姿勢は消極的です。これはNRAなどが圧力をかけているからですが、その背景には銃を売りたい業界の思惑というよりも「軽微な精神疾患」や「軽微な犯歴」のために「銃が持てない人」は「襲われたら死ねというのか?」という銃社会独特の論理があるからです。

この問題を解決する方法はただ一つだと思います。それは銃の新規販売を禁止するだけでなく、現在社会に出回っている銃を回収する、つまり「刀狩り」ならぬ「銃砲狩り」をするという思い切った措置です。仮にこの措置が徹底すれば、銃社会の人々も「銃の束縛」から解放される方向に動き出すでしょう。

今持っている銃を取り上げるのは大変だから、とりあえず銃を新規に売るのを規制しよう、多くの銃規制論はそのような発想に基づいています。ですが、それでは、大量の銃が残る社会、特に「アサルト・ウェポン規制法(AWB)」が失効した2004年以降に強力な軍用ライフルが大量に出回っている中では、銃社会の側の恐怖心は解きほぐすことはできないと思われます。

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2025年7月22日号(7月15日発売)は「AIの6原則」特集。加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」/仕事・学習で最適化する6つのルールとは


プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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