コラム

トランプの同盟軽視が招いた「グリーンランド買収」をめぐるゴタゴタ

2019年08月23日(金)15時15分

3番目は、同盟国との外交の軽視という傾向です。トランプ外交というのは、「アメリカ・ファースト」が軸ですが、とりわけアメリカの中核的な同盟国であるNATOやその他のG7諸国に対して関係悪化も辞さないという姿勢があるわけです。

コスト的に「アメリカが持ち出しになっている」として費用負担を迫るとか、共通合意であった対イラン核合意をひっくり返すなど、まるで「西側同盟を崩す方向」で動いているわけですが、今回の発言で9月のデンマーク公式訪問が潰れただけでなく、アメリカとデンマークの関係が著しく悪化したわけで、まさにこの「アメリカ・ファースト」が悪い形で出たと言えます。

いずれにしても、アメリカとデンマークとの間には、特別に問題はありませんでした。設立時からNATOメンバーであるデンマークはISAF(国際治安支援部隊)に参加する形で、アフガニスタンに派兵しています。40人を超える犠牲も出していますが、テロとの戦いのためには必要な国策と位置付けて取り組んできています。

そんな良好な関係が、一言で崩壊してしまうのですから恐ろしいことです。本稿の時点でトランプ大統領は、デンマークのフレデリクセン首相に対して「ノーならノーとだけ言えばいいのに、バカげた(absurd)考えだなどと言う言い方をしたのは、底意地が悪い(nasty)な女だ」と激しく罵倒しています。

このニュースと前後して、トランプ大統領は「民主党に投票するユダヤ系は、イスラエルへの忠誠心が疑われても仕方がない」という発言が、穏健ユダヤ系を中心に激しい憤激を買っています。この問題とグリーンランド騒動の相乗効果で、反対派だけでなく中道層からも大統領への冷ややかな反応が出てきているのです。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

ニュース速報

ワールド

アングル:豪経済の長期繁栄に終止符、構造転換がコロ

ビジネス

焦点:「バイデン大統領」に備える投資家、ドル売りに

ワールド

トランプ氏、独立記念日に記念碑破壊批判へ 景勝地で

ワールド

NFLレッドスキンズ、チーム名変更検討へ 人種差別

MAGAZINE

特集:Black Lives Matter

2020-7・ 7号(6/30発売)

今回の黒人差別反対運動はいつもとは違う──「人権軽視大国」アメリカが変わる日

人気ランキング

  • 1

    国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉

  • 2

    東京都、新型コロナウイルス新規感染107人を確認 小池知事が緊急会見「現在は感染拡大要警戒」

  • 3

    孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? ようやくプロセスが明らかに

  • 4

    英首相ジョンソン、香港市民の英市民権取得を確約 中…

  • 5

    ブラックホール爆弾から無限のエネルギーを取り出す…

  • 6

    新型コロナが細胞に生やす不気味な触手の正体は

  • 7

    東京都、3日の新型コロナ新規感染は124人 小池知事「…

  • 8

    スウェーデンの悪夢はパンデミック以前から始まって…

  • 9

    亡き娘にもう一度会いたい──死者にVRで再会する番組…

  • 10

    【香港危機】台湾の蔡英文がアジアの民主主義を救う

  • 1

    国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉

  • 2

    世界最大の中国「三峡ダム」に決壊の脅威? 集中豪雨で大規模水害、そして...

  • 3

    東京都、新型コロナウイルス新規感染107人を確認 小池知事が緊急会見「現在は感染拡大要警戒」

  • 4

    孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? ようや…

  • 5

    中国・超大国への道、最大の障壁は「日本」──そこで…

  • 6

    スウェーデンの悪夢はパンデミック以前から始まって…

  • 7

    英首相ジョンソン、香港市民の英市民権取得を確約 中…

  • 8

    韓国「炭酸カリウム」を不当廉売? 経産省が調査開…

  • 9

    北京で6月にクラスター発生したコロナウイルス、東南…

  • 10

    BLMの指導者「アメリカが我々の要求に応じないなら現…

  • 1

    国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉

  • 2

    世界最大の中国「三峡ダム」に決壊の脅威? 集中豪雨で大規模水害、そして...

  • 3

    街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食べたら...

  • 4

    東京都、新型コロナウイルス新規感染107人を確認 小…

  • 5

    ポスト安倍レースで石破氏に勢い 二階幹事長が支持…

  • 6

    自殺かリンチか、差別に怒るアメリカで木に吊るされ…

  • 7

    孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? ようや…

  • 8

    宇宙に関する「最も恐ろしいこと」は何? 米投稿サ…

  • 9

    中国・超大国への道、最大の障壁は「日本」──そこで…

  • 10

    「この貞淑な花嫁は......男だ」 イスラムの教え強い…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!