コラム

分裂を煽るだけのトランプ「フェニックス居直り演説」

2017年08月25日(金)14時40分

これまでは社会的に存在が許されなかった「ネオナチ、KKK、白人至上主義者」を許容するムードは拡大したと言えます。南軍記念碑に関しては、大統領自身が婉曲な言い方ながら撤去への反対を口にした、これも深刻な状況です。

今回のフェニックス演説は、このように社会における2つの分断をより煽った形となりました。1つは「トランプ支持者(トランパー)」と、それ以外の「アンチ・トランプ派」の深刻な分断であり、もう1つは、トランプ大統領と議会共和党の分裂です。この議会との対決ということでは、演説にあった「政府閉鎖になってもいいから壁を作る」という部分が、悪質な挑発と受け止められており、早速ライアン下院議長が反発するなど、政局は波乱含みとなってきました。

21日の「アフガン戦略」演説の内容が常識的であったのを好感して上げた株価も、22日の「フェニックス演説」の翌日は、ダウが87ポイント下げるなど困惑した空気を示しています。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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