コラム

オバマ広島訪問をアメリカはどう受け止めたか

2016年05月31日(火)15時45分

 もう一つ、アメリカの反対論で目立ったのは、元国連大使で、アメリカ史上最も国連を軽視していた、つまりは一国主義の権化のような存在のジョン・ボルトンでした。ボルトンは「ナルシストであるオバマの謝罪ツアーの一環」だとして、サウジ王室に頭を下げ、09年には天皇皇后両陛下に深々とお辞儀をし、そして今年はキューバに頭を下げに行った、その一連の「謝罪ツアー」だとこき下ろしています。ですが、掲載した媒体が「ニューヨーク・ポスト」という「タブロイド紙」であることが、この発言の限界を物語っているように思います。

 結論から言えば、アメリカ社会はメディアを通じて、今回のオバマ大統領の広島訪問、そして広島宣言とも言うべきスピーチを正面から受け止めたと言えるでしょう。驚きや爆発的な感動はなかったかもしれませんが、受け止められたことは間違いないと思います。

 それは反核というメッセージだけでなく、日本という国が親しい友人であることも含めての受け止め方だと思います。反対論はありましたが、どれも想定の範囲内だったと言えるものです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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