コラム

大阪は「副首都」ではなく「アジアの商都」を目指せ

2015年11月24日(火)16時30分

 要するに、東京に集中している官庁の中で、例えば厚労省なら年金行政を行う部分であるとか、文科省なら文化庁や原子力行政に関する部分など、特に東京に置く必然性のない(あくまで仮の例として言っています)機能が大阪に移転して、中之島なり大阪城公園のあたりとか、あるいは南港の方でもいいですが、「中央官庁の合同庁舎ナントカ号館」が大阪にできて、多くの役人が大阪に住んだり、東京と大阪をリニアで往復したり、とそういう話です。

 冗談ではありません。それでは、日本の経済は再生しないし、日本の財政も好転しません。新たな価値は何も生まれず、日本から海外に逃げていった部分が戻ってくることもありません。国レベルでは、単に全体の行政コストが増加するだけです。それによって、中長期のGDPにプラスになることは何もありません。

 ハッキリ言って、これでは小さな政府論ではなく、大きな政府論の変形に過ぎないのです。労組と福祉を重視する左派的な大きな政府論ではありませんが、公共工事が好きな日本の伝統的な右派の大きな政府論とは瓜二つであり、しかも、地方の時代と言っておきながら、「二極化論」と称して東京と大阪以外は切り捨てようというのですから、これもおかしな話です。

 政府機能の一極集中は確かに問題ですが、それはもっと広域に分散して、地方を活性化するべきであって、二極化というのは、国全体の活力再生には貢献しないと思われます。

 大阪は商都としての伝統に回帰すべきです。そのためには、英語で商談ができ、株式上場が国際基準ででき、会計業務や紛争処理が英語でしかも国際標準でできる、そして、そうしたグローバルな「事務仕事」が東京より数倍効率的にできて、シンガポールや上海と連動してビジネスができる、そのような都市、アジアの商都として活性化させていくしか、生き残る道はないと思います。とにかくダブル選の勝利を受けて、そうした部分をもう一度再考していくこと、それが大阪維新に求められていると思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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