コラム

シリア問題、米ロ協調のシナリオはあるのか?

2015年11月17日(火)15時50分

 本コラムで何度かお話をしてきたように、ウクライナに関してロシアは「ルーブル安+原油安の中で少しでもウクライナから売掛債権の取り立てをしたい」という意識が中核になっています。対する西側は「金融的に失敗国家であるウクライナにカネを出したくない」というのが基本姿勢です。ウクライナに資金援助をしても、返済の可能性は低いし、カネはそのままロシアに流れるだけだからです。

 ウクライナ問題はともかく、ではシリアの和平はどうなるのかというと、次回の「シリア問題会議」つまり米ロに加えて、EUやトルコ、ヨルダンなども参加しての会議は、今回のテロを重く見る立場から12月にパリで開催して継続して討議するようです。

 ですが、このまま米ロが折り合いをつけることなく推移するということは、米欧は「ISILは敵だが、同時に反アサドを応援したい」という立場、ロシアは「ISILも敵だがアサドも応援したいので反アサドとは敵対」、そしてトルコは「ISILも敵だが、その被害者のクルド人を完全に善玉扱いするのは困る」という立場と、バラバラの状態が続くということです。

 仮に当座の差異を「棚上げ」して、「アンチISIL」の大同団結ができたとしても、ISILにはその「違い」を突かれるという、これまでのパターンの繰り返しでは何にもなりません。米欧は、ロシアともっと突っ込んだ利害調整を行わなければ、事態は進展しないでしょう。

 1つの方向性としては「ロシアがアサド退陣を承諾する」、「そのかわりに米欧は、アサド暫定後継を同じ少数派のアラウィー教徒から出すことに同意する」、その上で「シリア人の手で憲法改正や選挙を実施させる」という順序を踏むという流れです。12月のパリ会議では、こうした「落とし所」を軸にもっと具体的な話にしていかないと「アンチISILの共同戦線」は実現できないと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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