コラム

リトルリーグに現れた「少女エース」の快投

2014年08月19日(火)10時34分

 デイビス投手の、その「目」ですが、誰かに似ていると思ったら、今年で現役を引退する球界の至宝、ヤンキースのデレク・ジーター選手に似ているように思います。色も大きさも輝きもソックリで、ただ、ジーター選手の目がどこか少年のナイーブさをたたえているとしたら、デイビス投手の目には既に成熟した落ち着きを感じるのです。かといって、全く濁りのない強い目、全米が熱狂するのも当然でしょう。

 さて、この後の展開ですが、彼女を擁したフィラデルフィアと、日本の北砂リトルが決勝で対戦する可能性もかなり出てきたように思います。仮に決勝でぶつかったとしたら、何よりも彼女の「目力」に負けないこと、そして彼女の「落ち着いたグラウンドマナー」に押されないことが大切だと思います。

 そのために、北砂リトルの監督さんには2つお願いしたいことがあります。一つは、打席に入るために「気合を入れる」ためか「意味もなく叫ぶ」習慣が日本のリトルにはあるようです。あれは、何となく弱々しく見えてしまうわけで、デイビス投手のような精神的にも成熟した相手には逆効果だと思います。

 もう一つは、一塁のベースコーチに出した選手が、タイミングアウト、判定もアウトの局面で、選手をかばうように「セーフ」のジェスチャーをする、これも止めていただきたいと思います。アメリカの常識では、審判へのリスペクトに欠けるとみなされますし、特にデイビス投手のように落ち着き払ったグラウンドマナーのできる選手が引っ張っている相手と比較されると、格好悪い印象がどうしても出てしまうからです。

 今年は、珍しくこのリトルの世界大会は、日本のBSで中継があるようですし、全米向けには、いつものようにESPNがゴールデンタイムの目玉番組として中継します。仮にデイビス投手が決勝進出ということになれば、猛烈な視聴率になることは間違いありません。

 仮にそこで日米決戦ということになるのであれば、北砂リトルにはデイビス投手の精神性に負けないような、堂々たる王者の野球を見せて欲しいと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米、来週にも新たな対中関税発表 EVなど戦略分野対

ビジネス

米5月ミシガン大消費者信頼感67.4に低下、インフ

ビジネス

米金融政策、十分に制約的でない可能性=ダラス連銀総

ビジネス

6月利下げへの過度な期待は「賢明でない」=英中銀ピ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカネを取り戻せない」――水原一平の罪状認否を前に米大学教授が厳しい予測

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 9

    「一番マシ」な政党だったはずが...一党長期政権支配…

  • 10

    「妻の行動で国民に心配かけたことを謝罪」 韓国ユン…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story