Picture Power

【写真特集】暗黒郷アマゾンはどこまで続く

AMAZONIAN DYSTOPIA

Photographs by LALO DE ALMEIDA

2022年03月05日(土)16時00分

無秩序な開拓(写真の説明は文末に)

<ブラジルのボルソナロ大統領は開発を重視して違法行為も放置。森林破壊が急速に進んでいる>

アマゾンの熱帯雨林はしばしば「地球の肺」と呼ばれる。大量の二酸化炭素を吸収し、地球上の酸素の約20%を生産するなど、温暖化抑制のカギとなる存在だ。約300万種の植物や動物が生息し、最も生物多様性に富んだ地域でもある。しかし近年は、環境の悪化が懸念されている。

大きな原因は、アマゾンの森林の3分の2以上を占めるブラジルの政策だ。2019年に就任した右派のジャイル・ボルソナロ大統領は環境保護よりも開発を重視しており、違法行為も放置。森林破壊が急激に進んでいる。

ボルソナロは、アマゾンの経済開発は貧困層を救うとも主張する。だが、伐採などで生まれたお金が地元に還元されることはほとんどない。

写真家ラロ・デ・アルメイダが過去10年にわたりアマゾンの森林を撮影してきた写真は、そうした数々の問題を浮き彫りにしている。

ボルソナロは国際社会に向けて今年4月、違法伐採を30年までにゼロにすると表明した。この方針転換は、アルメイダの捉えた現実を変えるきっかけになるだろうか。

(冒頭写真の説明)
入植者が北西部アマゾナス州レアリダデの森林を切り開き、家を建てている(2018年8月)。ここは舗装の劣化で1988年に通行不能になった道路BR319号線沿いだが、ボルソナロ政権の計画どおりBR319が再舗装されれば伐採や土地開発はさらに進む。アマゾンでは道路の開通ほど、環境に変化をもたらすものはない


ppama02.jpg

<放牧>
野焼きされた土地で放牧される牛(北部パラ州のアルタミラ国有林、2014年9月)。牧草地開拓は森林消失の大きな原因だが、放牧の目的は畜産だけでない。ブラジルの法律では、一定の条件で土地を占有すれば自分のものにできるため、土地占拠を目的に放牧するケースもある


ppama03.jpg

<森林伐採>
北部ロンドニア州のジャマリ国有林で伐採され、トラクターで牽引される丸太(2018年8月)。ブラジル国立宇宙研究所によれば、アマゾンは今年7月までの1年間で1万3235平方キロ分と、06年以降で最大規模の森林面積が消失した。違法な伐採や野焼き、山火事などで森林破壊が続けば周辺の降雨量は大幅に減少し、さまざまな悪影響を及ぼす


ppama04.jpg

<ボルソナロ政権>
パラ州アルタミラで地元農民が建てたボルソナロ大統領支持の看板(2020年7月)。ボルソナロは19年1月の就任以来、アマゾン熱帯雨林の開発を優先し、環境保護を軽視する政策を取ってきた。そのため森林破壊が急速に進み、世界から批判を浴びている


ppama05.jpg

<土地略取>
熱帯雨林中のトリンシェイラバカジャ先住民居留地を見回り、村に戻ってきたシクリン人の戦士たち(2019年8月)。国が守ってくれないため、彼らは居留地の土地を開拓し収奪しようとする者に立ち向かい、森林破壊を防ぐ自衛組織を結成した

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が

ワールド

ウォルツ米大統領補佐官が辞任へ=関係筋

ビジネス

米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、2カ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story