Picture Power

【写真特集】北極に訪れた不可逆な未来

ARCTIC: NEW FRONTIER

Photographs by YURI KOZYREV & KADIR VAN LOHUIZEN

2019年04月23日(火)18時45分

【1】北極海に面した米アラスカ州バローに流れ着いた棚氷のかけら。海面上昇などによりバローの海岸は浸食が進んでいる

<北極圏の解氷は着々と進み、新たな交易ルートや石油油田の開発が進む一方、シベリアをはじめこの地に住む遊牧民の生活環境は脅かされている>

英ケンブリッジ大学のピーター・ワダムズ教授が「2015年、北極海の完全解氷」説を唱えてから5年余り。ワダムズの予測は的中しなかったものの、解氷は「順調に」進み、人を寄せ付けない極地という北極海の印象は大きく変わりつつある。

氷が解けたことで、砕氷船の協力なしに航海ができる新たな交易ルートが開発された。手付かずの地域に眠っていた石油の開発が本格化し、エネルギー産業が勃興。人の往来が増えることで安全保障への関心も高まり、カナダやロシアは沿岸警備を拡充させている。商業面でも、氷山を「商品」に世界中の観光客を呼び込む機運が高まっている。

半面、シベリアをはじめこの地に住む遊牧民の生活環境が脅かされている。鉱山開発の影響で病人も出た。原子力発電所の建設もささやかれ、25年までに海に沈むと警告された村もある。

フォトジャーナリストのユーリ・コズィレフとカディル・ファン・ロホイゼンは、不可逆的に変わり始めた北極圏を調査報道としてレンズに収めた。そこに映し出されたのは、よくも悪くも人間のにおいがする、人間による人間の、人間のための北極の姿だった。

pparctic-map.jpg

Photographs: 【1】〜【7】: Kadir van Lohuizen-Noor for Fondation Carmignac , 【8】〜【13】: Yuri Kozyrev-Noor for Fondation Carmignac


pparctic02.jpg

【2】レゾリュート湾岸での活動を活発化させているカナダ軍。先住民族イヌイットで編成されるレンジャー部隊との共同訓練も行う


pparctic03.jpg

【3】2010年に開発が始まったカナダ領メドウバンクのアグニコ・イーグル金鉱山。解氷が進んだことで作業は以前よりも容易になったが


pparctic04.jpg

【4】米アラスカ州のポイント・ホープで捕鯨をするイヌイット。海氷の減少で鯨が息継ぎのために海面浮上する場所が広がり猟が困難に


pparctic05.jpg

【5】沿岸警備に使われるカナダの砕氷船は学者らの北極調査にも使われる。解氷が進んだとはいえ厚い氷が残るハドソン湾沖合を進む


pparctic06.jpg

【6】ノルウェー領スバールバル諸島唯一の有人島の町バレンツブルク。住民約500人の多くが炭鉱業に従事するウクライナ人かロシア人だ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米EU関税問題、早期解決を メルツ独首相が訴え

ワールド

ロシア、海軍副司令官の死亡を確認 クルスク州で=タ

ワールド

仏航空管制官がスト、旅行シーズンに数百便が欠航

ワールド

ウクライナ・米首脳が4日に電話会談、兵器供給停止が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 10
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story