コラム

ローマ教皇「日本は難民を受け入れて」発言が大炎上したけど

2019年12月20日(金)17時00分

もちろん、この思考プロセスは難民受け入れ賛成派の主張に対しても使える。

twitter01.jpg経済大国日本のGDPは世界の4%を占める(購買力平価ベース)ので、難民の4%(約104万人)を受け入れるべき!

そうか? 経済大国だからこそ、物価が高くて受け入れ先に向いていないのでは? 帰国が前提の難民だから、避難先は出身国から遠くて、物価の高い日本以外で探すべきとも言えよう。しかも、世論がまとまる前に100万人の難民を無理やり受け入れようとしたら、日本の右傾化が急ペースで進み、逆効果になり得る。

そうか......。

こうやって両方の声に耳を傾けながら、その前提や主張を精査することでどんどん情報が入り、理解が深まっていく。ツイートを議論のきっかけにするのはいい手だ。でも願わくば、どこかで断言から提言に転じたい。各自の「条件」を探りながら、妥協案や解決策を見いだせると最高だ。

twitter01.jpg難民を大勢受け入れることは、国民感情的に非現実的。でも、国益や「責任」を考えると難民の救済に努めるべき。では、難民の出身国に近くて、物価の安い国と手を組み、日本主導で支援しようか? 長期避難者のために、海外にある日本企業の工場で難民の雇用枠を作ろうか? 受け入れはしなくても、現地で衛生管理や医療関連の作業を日本が担当しようか?

などなどが考えられる。怒鳴りあうのではなく、話し合う、耳を傾け合うことで、疑問の「そうか?」や勉強の「そうか......」から、ひらめきの「そうか!」が生まれるかもしれない。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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