最新記事
シリーズ日本再発見

日本の警備会社が生んだ「セキュリティの概念」を変えるサービス

2016年07月27日(水)15時12分
西山 亨

写真提供:セコム

<半世紀以上前に、日本初の警備保障会社として誕生したセコム。事業展開するアジア諸国やセキュリティ先進国のイギリスでも高く評価されているのは、欧米企業にはなかった「オンラインで24時間監視し、警備員が駆けつける」というサービスだった> (1978年に台湾で現地法人を設立、1993年には台湾株式市場に上場した)

【シリーズ】日本再発見「世界で支持される日本式サービス」

 6月末に発表された平成27年度国勢調査の抽出速報集計によると、日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は26.7%と、初めて25%を超えた。4人に1人が高齢者であり、世界で最も高い水準だ。2025年には30%を超えると予測されており、世界に先駆けて超高齢化社会を迎えている日本では、それに対応したさまざまなサービスがすでに出現している。

 安否確認や緊急通報といった"見守りサービス"もそのひとつだ。警備サービス業のセコムでは、高齢者にペンダント型の通報機を常に身に着けてもらい、行動を見守るというサービスを開発。このサービスは、同社が「ホーム・セキュリティ」のオプションとして提供しているものだ。

【参考記事】気が滅入る「老人地獄」は、9年後にさらに悪化する

 センサーなどの機器とコントロールセンターを通信回線でつないで24時間監視し、何か問題が発生すれば警備員が駆けつけるというアイデアは、もともとはセコムが考え出したもの。これに端を発し、同社は1966年、日本で初めて「オンライン・セキュリティシステム」を確立・開始した。

 現在、同社のセキュリティ事業は、世界12カ国に展開している(セキュリティ以外の事業を含めたグループ全体では21カ国)。1978年に台湾、1981年に韓国へ進出し、今では中国、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ベトナム、ミャンマーのアジア圏のほか、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドでも事業を行っている。

「創業者である飯田亮は、『いつでも、どこでも、誰にでも安全を提供したい』という理念を早くから掲げていました」と語るのは、コーポレート広報部部長・理事の安田稔さん。"どこでも"という言葉は、創業当初から海外への進出も考えていたことを意味しているという。

欧米企業は機器の販売を重要視している

 セコムは1962年、日本で初めての警備保障会社として創業。1964年の東京オリンピックで選手村の警備を単独で担ったことで飛躍のきっかけをつかんだ。しかし、現場に警備員が常駐する警備では労働集約型のビジネスになってしまう。そのことがオンライン・セキュリティシステムの開発を促すことになった。

 1966年にオンライン・セキュリティシステムを事業化し、1981年には法人に加えて、一般家庭のマーケットに進出。日本で初めてホーム・セキュリティのサービスを提供し始めた。現在、国内での契約数は企業が100万件を、家庭では114万件をそれぞれ超えている(2016年3月時点)。海外の契約数では、企業と家庭を合わせて約76万件を達成しているという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ベトナム次期指導部候補を選定、ラム書記長留任へ 1

ビジネス

米ホリデーシーズンの売上高は約4%増=ビザとマスタ

ビジネス

スペイン、ドイツの輸出先トップ10に復帰へ 経済成

ビジネス

ノボノルディスク株が7.5%急騰、米当局が肥満症治
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中