最新記事
シリーズ日本再発見

日本経済のカギを握るのは、外国の資産30億円「超富裕層」たち!?

2018年07月02日(月)16時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

japan180702-3.jpg

nopparit-iStock.

超富裕層に「おもてなし」は必要ない

また日本には、超富裕層が好んで所有する大型ヨット専用の係留施設が少なく、タクシーにしても高級車を用意している会社がほとんどない。こうした現状を見れば、日本の超富裕層向けビジネスは、世界と比べてかなり立ち後れていると言わざるを得ない。

さらに、いくら施設と移動手段が揃っても、サービスが伴っていなければ意味がない。それも当然、超富裕層にとっての最良のサービスだ。

というのも、日本の「おもてなし」は必ずしも彼らには喜ばれないからだ。日本ならではの「おもてなし」とは、細やかな気遣いや心配りといった形で表されることが多いが、それらは無償で提供されるこその美点だとも言える。

だが、超富裕層に対して「無償」が魅力にならないことは明らかだ。それよりも、特別扱いを適正な対価で提供することのほうが求められる。

世界的なホテルチェーンであり、ホスピタリティの高さで超富裕層たちに愛される「ザ・リッツ・カールトン」では、従業員が自らの判断でサービスを提供することが認められている。そのために、1日2000ドル(約22万円)までなら、上司の判断を仰がずに使うことができるのだという。

そもそも、超富裕層は特別扱いに慣れている。だから、どんなに質が高くても、定型的・画一的なサービスでは彼らを惹きつけることはできない。言い換えると、ひとりひとりの個別のオーダーに臨機応変に応えられるようなサービスでなければならないのだ。

これまでインバウンド投資促進策として進められてきた取り組みには、どういう人たちを念頭にどのように働きかけるのかといった戦略的視点が欠けていた、と本書は指摘する。バックパッカーと超富裕層では求めるものが違うのは当然なのに、その重要な点を考慮していなかったのだ。

適切な民泊を推進するなど、幅広い層の人々に日本を訪れてもらうための施策は、今後も必要だろう。しかし、2020年の東京オリンピック・パラリンピック後を見据えた持続的な経済成長という側面においては、超富裕層という人材と、彼らが持つ資金力こそが大きなインパクトになる。

訪日外国人数が順調に伸びていると、安心しきっていてはいけないのだ。


『世界から大富豪が訪れる国へ 日本の極みプロジェクト』
 秋元 司 著
 CCCメディアハウス


【お知らせ】ゲストに小沢仁志さん、元木大介さん!
 『日本の極みプロジェクト』著者トーク&サイン会
日時:2018年7月28日(土) 13:30~14:30
場所:三省堂書店 神保町本店 8階特設会場
日時:2018年7月28日(土) 13:30~14:30
場所:三省堂書店 神保町本店 8階特設会場
http://jinbocho.books-sanseido.co.jp/events/4018

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日銀の情報発信、利上げ判断につながる変化 円安を警

ワールド

米感謝祭休暇の航空需要が縮小、政府閉鎖が影響

ワールド

NZ中銀が0.25%利下げ、景気認識改善 緩和終了

ワールド

アングル:ケネディ暗殺文書「押収」の舞台裏、国家情
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中