最新記事
シリーズ日本再発見

訪日外国人の胃袋をつかむ「食」のマッチングサービス

2016年08月12日(金)15時53分
奥窪優木

<それまで旅行代理店とつきあいのなかった日本の飲食店が、団体の外国人客を呼び込める。あるいは、日本語のわからない個人の外国人客が、日本のニッチなレストランを予約できる。そんなウェブサービスが続々と誕生している。これらの飲食店予約サービスは「爆買い」終息後のインバウンドを救うか> (写真:個人の訪日外国人向けの「東京ディナーチケット」のウェブサイト)

【シリーズ】日本再発見「日本のおもてなし施策最前線」

 あれほど話題になった「爆買い」に早くも陰りが見え始めている。

 日本百貨店協会が発表した全国加盟店の4月の免税総売上高が、前年同月比で39カ月ぶりにマイナスに転じた。さらに6月まで3カ月連続して前年割れを記録し、外国人客による爆買い特需の失速が指摘されている。

 観光庁が平成28年4-6月期「訪日外国人消費動向調査」(速報)の結果として公表した訪日外国人の旅行消費額の「費目別構成比」においても、買い物代は前年同期比で約5.6ポイントダウンの37.8%にとどまり、金額にしても253億円の減少となっている。

 ところが、シュリンクする爆買いとは対照的に、盛り上がりを見せているのが外国人観光客による「爆食」だ。同データの飲食代は同1.7ポイント増の20.1%となっており、金額でも276億円増となっている。また、「訪日前に期待していたこと」という問いに対し「日本食を食べること」と回答した人の割合も、前年同期比で69%から71.8%へと増加している。

【参考記事】「爆買い」なき中国ビジネスでいちばん大切なこと

 どうやら「モノ」が中心だったインバウンド消費が「食」へと波及しつつあるようだ。そんななか、訪日客に豊かな食体験を提供するサービスが新たに誕生している。

japan160812-2.jpg

ス「団タメ!エクスプレス」のウェブサイト

 2011年に創業したボーダレスシティは、海外からの訪日団体旅行を催行する旅行代理店と日本の飲食店とのマッチングサービス「団タメ!エクスプレス」を運営。その仕組みは、専用サイト上で旅行代理店が食のジャンルや予算の希望を出し、加盟する飲食店がそれに対して手を挙げるというものだ。

 同社代表取締役の大島秀崇氏は、このサービスの独自性についてこう話す。

「これまでは団体旅行の行程に組み込まれる飲食店の選定は、旅行代理店から現地の手配業務を受託するランドオペレーターに任せられていた。その結果、ランドオペレーターとキックバック契約を結んだ飲食店が採用されることが多く、ツアー参加者本位とは言いがたかった。かといって旅行代理店にとっても、ホテルやバス手配と違って単価が低く利幅の取れない飲食店の新規開拓は、力を入れにくい状況にあった。一方、旅行代理店やランドオペレーターとつきあいのない飲食店は、団体旅行を呼び込みたくてもルートがなかった」

 旅行代理店と飲食店の文字通りの架け橋となったス「団タメ!エクスプレス」は、昨年10月の正式ローンチからわずか3カ月で、依頼金額が1億円を突破。現在は、700の旅行代理店と4500の飲食店を会員として抱えており、今年中に依頼金額15 億円を目指している。やって来る団体旅行客の出発国は、中国やタイ、韓国、インドネシアなど45カ国以上。それだけ旅行代理店側にも飲食店側にも、マッチングの潜在的なニーズがあったということだろう。

【参考記事】NY著名フレンチシェフが休業、日本に和食を学びに来る!

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=下落、ダウ330ドル超安 まちまちの

ワールド

米、ロシア石油大手ロスネフチとルクオイルに制裁 ウ

ビジネス

NY外為市場=英ポンド下落、ドルは対円で小幅安

ビジネス

米IBM、第3四半期決算は予想上回る AI需要でソ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 6
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 7
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    やっぱり王様になりたい!ホワイトハウスの一部を破…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 6
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中