コラム

その診断、信じていいの?

2011年06月28日(火)14時01分

「子供が躁鬱(そううつ)病になるという証拠はゼロだと思う」。アメリカの現役小児精神科医による記事は衝撃でした。今週発売のニューズウィーク日本版でご紹介する『ママ、僕は本当に躁鬱病なの?』という記事です。

 アメリカでは子供の双極性障害(躁鬱病)は子供全体の1~4%に見られる重い疾患だとされていて、この診断を下される患者が今、急増しているそうです。ところがこの記事の著者をはじめ、子供の躁鬱病はありえないと主張している医師も多い。診断の基準があまりに不完全だからです。例えば、子供の躁鬱病の「症状」だとしてまかり通っているものが、「大げさな感情表現をする」「怒りっぽい」など。これらは子供の成長過程ではごく当たり前に見られる傾向だったり、注意欠陥多動性障害(ADHD)など他の疾患の症状だったりするものばかりだそうです。

 そんな症状で簡単に躁鬱病と決め付けられるなんて......。何より怖かったのは、小児精神科の世界では「診断にも流行がある」、との著者の言葉。子供の躁鬱病は90年代後半から急激にブームになったのですが、子供の双極性障害に関するたった1冊の本が世間の話題をさらったことがきっかけだったというのです。

 ブームに乗った誤った診断で大人の躁鬱病の薬を処方され、症状を悪化させたり危険な副作用に苦しむ子供もいるとのこと。アメリカの医学界への見方が変わってしまうような、考えさせられる記事です。

 そのほか、「中国はもしや北朝鮮以上の収容所国家かも?」「ダイアナが今50歳の女性として生きていたら?」など、読み応えある記事が満載のニューズウィーク日本版今週号は、明日(6月29日)発売です。お見逃しなく。

――編集部・高木由美子

このブログの他の記事も読む

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story