コラム

CM「オバマ機から脱出せよ!」

2010年08月23日(月)22時39分

 先週は、オバマ米大統領にとっては踏んだり蹴ったりの1週間だった。

 大論争に発展中のニューヨークの「グラウンド・ゼロ」近くのモスク建設計画を擁護するとも取れる発言をすると、16日には身内民主党の大物議員から計画に「反対」だとそっぽを向かれた。
 
 17日には、ギャラップ社の世論調査でオバマの不支持率が51%と初めての5割超えを記録(支持率は42%)。19日に発表されたピュー・リサーチセンターによる世論調査では、アメリカ人の約5人に1人(18%)が「オバマはイスラム教徒」だと思っていることが明らかになった(言うまでもないが、オバマはキリスト教徒だ)。

 19日から10日間の夏休みを取るといえば、「国民が大変なときに高級リゾートでバカンス」とたたかれる始末。

 夏休みに入る直前の3日間は、中間選挙に向けて5つの激戦州を回る「資金集めツアー」を決行し、得意の遊説で民主党の挽回を試みたオバマ。だが、支持率が低い地域ではオバマの登場が地元の民主党候補者にとって「ありがた迷惑」になりかねない。手伝いたいけど、控えめに――こうしたホワイトハウスの気遣いを笑い飛ばすかのように、16日に共和党がオバマに送りつけた残暑見舞いが、こちらのCMだ。


 共和党が制作したこのCM、タイトルはその名も「CRAZY」。8月9日、米格安航空会社ジェットブルー航空の客室乗務員が乗客の振る舞いにキレて、「こんな仕事は辞める」と大声で機内にアナウンス、缶ビール2本を片手に飛行機の緊急脱出シュートを使って逃走した事件のパロディーだ。大統領専用機エアフォース・ワンに乗っているのは、オバマ政権を遠ざけるような発言をしてきた民主党議員たち。キャプテン・オバマが、さあ皆さん、あなたたちの地元の「資金集めツアー」に出発します、とアナウンスすると、民主党議員たちが「ギャー!!!」と相次いで奇声を上げ、エアフォース・ワンから(オバマから)逃走するという内容だ。「オバマには来て欲しくない」という民主党候補たちの心情を、共和党が(勝手な解釈で)代弁してやろう、ということらしい(途中、なぜか04年大統領選の民主党予備選で「ヤー!!!」という奇声を上げて葬り去られたハワード・ディーン元候補の映像が登場するところが、何ともニクイ)。

 11月2日の中間選挙まで、あと70日。支持率低下に苦しむオバマ自身が、突然キレてエアフォース・ワンから飛び降りないことだけを願いたい。そう、どこかの国の「政権投げ出し」総理のように。


――編集部・小暮聡子

このブログの他の記事を読む

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米製造業新規受注、9月は前月比0.2%増 関税影響

ワールド

仏独首脳、米国のウクライナ和平案に強い懐疑感 「領

ビジネス

26年相場、AIの市場けん引続くが波乱も=ブラック

ワールド

米メタ、メタバース事業の予算を最大30%削減と報道
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 7
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 8
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 9
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 10
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story