中東カタールのドーハで開かれていたワシントン条約締約国会議は、モナコやEU(欧州連合)が提案した大西洋・地中海産クロマグロの禁輸案を否決して、3月25日に閉幕した。日本や中国といった消費国だけでなく、沿岸漁業国や途上国の間に欧米が主導する資源保護の手法への反発が広がったことが、否決の決め手となったようだ。
これを日本の外交成果だという見方がある。外務省と農林水産省が多くの職員を派遣して、提案否決を各国に働きかけたことは事実だ。最近、クジラやイルカの問題で日本の食文化は欧米諸国の批判にさらされていたので、ようやく一矢報いたと感じるのも無理はない。
一方の欧米諸国にとっては面白くない事態だ。クロマグロ漁の是非はとにかく、今回の否決がニュース記事で日本がどう報じられてたか見てみたい。
ニューヨーク・タイムズ紙は3月20日付けの社説欄でこの件を扱っている。タイトルは「漁業ロビーがまた勝利」。
「投票が先進国と途上国で割れた一面はあった。しかし間違ってはならない。(否決は)情け容赦ない日本のロビー活動の結果だ。日本国民は世界のクロマグロの4分の3を消費している。これによってチュニジアなど大規模な水産業を持つ、より貧しい国に安定した市場を提供している」
と、余り印象は良くない。さらに3月後半のインターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙に掲載された25日付けのAP電は、もっと詳細に日本のロビー活動を紹介している。タイトルは「国連保護会議の勝者は日本」。
「会議中、そこら中に日本人がいた。この2週間、主要な採決の前になると何十人という日本の政府職員が会議場を動き回り、途方に暮れながらも協力的な各国代表に指導を与えていた。クロマグロ禁輸案採決の前夜、カタールの日本大使館で各国代表を招いたレセプションを開き、そこでは大西洋産クロマグロを使ったスシが振る舞われた」
「日本が外交の枠を超えて、会議の精神に反する戦略を使った、と非難する各国代表もいる。ケニア代表は、日本が各国代表に対して日本の立場を支持するよう圧力をかけて、アフリカ諸国の漁業担当の政府職員が会議に出席できるよう費用を支払った、と非難する。これについては日本政府は繰り返し否定していた」
悪意的な解釈をすべて真に受ける必要は決してないだろう。しかし、こうした報道がされたことも念頭に置きつつ、日本は今後クロマグロの資源管理に積極的に関与する姿勢を示す必要があることは確かだ。
――編集部・知久敏之