コラム

自民党総裁選挙を控え政治情勢は流動的に、一筋の光明も

2021年08月25日(水)18時43分

インフレ2%目標が最優先とする高市氏

一方、下村、高市両氏に関しては、総裁選挙出馬に必要な推薦人を集められるのか、現状では不明である。また、彼らが出馬するとしても、次次回以降の選挙を睨んで首相候補として知名度を高める意味合いが大きいだろう。

こうした中で、総裁選出馬の立場を表明する高市氏は、マクロ経済政策に対する考えを明確に打ち出しているので、最近の文藝春秋のインタビュー記事などからピックアップする。高市氏は、菅総理を応援しているとする一方で「小出しで複雑な支援策に終始している」とコロナ対応のための菅政権の財政政策をやや批判的に評している。そして、「インフレ率2%に達成するまでは、時限的にプライマリーバランス規律を凍結して、戦略的な投資に関わる財政出動を優先する」と述べている。

インフレ2%目標が最優先とされ、経済成長を押し上げる拡張的な財政政策が実現したのは、第2次安倍政権発足直後の2013年の短期間である。この時期のみが、金融財政政策が一体となったマクロ安定化政策の徹底された期間だと筆者は認識しているが、この時の政策を続けることが、2%インフレと完全雇用実現という経済正常化に必要と高市氏は判断している。

債務残高の制約によらずに長期間財政赤字を継続させている米国の財政政策運営など、幅広い知見を複数のブレーンなどから得たことで、この財政政策に対する考え方を理解されたのだろう。自民党の有力政治家からこうした財政政策に対する考えが打ち出されたことは、大きな変化である。今後の自民党政治家の中で経済政策の議論の質が高まり、マクロ安定化政策が更に改善することを期待させる動きと評価できるし、今後の菅政権の経済政策運営に影響する可能性がある。

日本株市場の一筋の光明

以上情勢をまとめたが、これまで菅政権を支えてきた重鎮政治家の意向は変わらないとみられるので、菅首相が消去法的に自民党総裁として選ばれる、というのが筆者が想定しているメインシナリオである。もちろん、政治情勢は流動的である。

ただ、新型コロナの混沌を経て、高市氏のような世界標準の経済政策を示す自民党の政治家が現れた。また、8月22日に日本維新の会の馬場幹事長は、総選挙の結果によっては、自民・公明両党と、政策ごとの部分的な連携がありうる、との考えを示した。日本維新の会は、経済成長を重視する政策を掲げている。菅政権の支持率低下が続き、政局に対する不透明感は高まっているが、将来を期待できる動きが永田町でみられることは、日本株市場の一筋の光明と言えるだろう。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インドネシア、学生のデモ中に1人死亡 警察車両がは

ビジネス

消費者態度指数8月は前月比1.2ポイント上昇、2カ

ワールド

インドネシア中銀、ルピア安定に向け積極的な介入継続

ビジネス

ユーチューブTV加入者、FOXチャンネル視聴引き続
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ」とは何か? 対策のカギは「航空機のトイレ」に
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 7
    「ガソリンスタンドに行列」...ウクライナの反撃が「…
  • 8
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 9
    米ロ首脳会談の後、プーチンが「尻尾を振る相手」...…
  • 10
    自らの力で「筋肉の扉」を開くために――「なかやまき…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 7
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 8
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 9
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story