コラム

脚本・監督も主演2人も素晴らしい......僕の大切な『オアシス』は奇跡を見せてくれる

2026年02月11日(水)11時15分

ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN

<出所したてのトラブルメーカーと脳性麻痺の女性が主人公のこのラブストーリーをたくさんの人に知ってほしい>

22年前に日本公開された本作を観るまで、これが3作目となるイ・チャンドン監督だけではなく、主演俳優のソル・ギョングとムン・ソリの名前も知らなかった。

つまりほぼ白紙で観た。そして衝撃を受けた。


イにとって2作目である『ペパーミント・キャンディー』はその後に観た。観終えてから、主演の2人がソルとムンであることに気が付いた。

そのソルがプロレスラーの力道山を演じた『力道山』を観たのも同じ頃だ。この映画は外れだったけれど、同じ俳優とは思えないほどに変貌するソルには本当に驚いた。カメレオン俳優と呼ばれるゆえんだ。

ちなみにムンも、本作後に『大統領の理髪師』に出演していたが、クレジットを見るまで気付けなかった。

俳優はざっくりと2つに分けることができる。自分に役を引き寄せる俳優と、役に自分を引き寄せる俳優だ。

前者の典型は勝新太郎や高倉健で、ソルやダスティン・ホフマンは後者の典型。特にソルの場合は、「引き寄せる」のレベルではなく「憑依」という言葉を使いたくなる。

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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