「抗議があったから中止する」あいトリを筆頭に相次ぐこのパターンは深刻な危機だ
ILLUSTRATION BY NATSUCO MOON FOR NEWSWEEK JAPAN
<家の敷地内に小屋を作り、精神障害者を家族が閉じ込める「私宅監置」について取り上げたドキュメンタリー映画『夜明け前のうた』が文化庁の文化記録映画優秀賞を受賞した。しかし、その記念上映は、遺族の抗議により実施されなかった>
かつてこの国では、精神障害者を家族が隔離する「私宅監置」と呼ばれる制度があった。
家の敷地内に小屋を作り、中に閉じ込めて外から鍵を掛ける。要するに座敷牢だ。でも衛生面の配慮はほとんどない。家畜以下の生活だ。
本土では1950年まで、沖縄では本土復帰する72年までこの私宅監置が行政主導で行われていた。その実態に迫るドキュメンタリー映画『夜明け前のうた 消された沖縄の障害者』は昨年3月に劇場公開され、11月2日には文化庁の文化記録映画優秀賞を受賞して、その記念上映が同月6日に行われる予定だった。だが、直前に文化庁は上映を延期(実質的には中止)することを発表した。
延期の理由について文化庁は、映画に登場する1人の精神障害者の遺族から「事実関係が異なる箇所があり、弁護士を立てて映画製作者側に抗議をしている」との連絡が同庁にあり、「ご遺族の人権を傷つけ取り返しがつかなくなる等の可能性がある」と説明した。文化庁のこのスタンスに倣う形で、いくつかの上映会や映画祭などが上映を中止した。
遺族の抗議内容について、ここに記す紙幅はない。もしも関心を持ってくれるならネットなどで調べてほしい。でも最初にこの経緯を知ったとき僕は嘆息した。抗議があったから中止する。映画だけではない。あいちトリエンナーレを筆頭に、ここ数年はこのパターンが相次いでいる。
もちろん、遺族の思いは可能な限り配慮されるべきだ。身内の恥を隠したい(恥ではないと僕は思うが)との気持ちも理解できる。でもこの映画に登場する精神障害者たちのほとんどは、既に故人となっていて写真のみの登場であり、住所や名字は伏せるなどの配慮もされている。
文化庁は「人権を傷つけ取り返しがつかなくなる等の可能性がある」と上映中止の理由を説明したが、可能性を理由にするならば何も表現できなくなる。特にドキュメンタリーは俳優たちを使うドラマとは違って、肖像権やプライバシー権と相性が悪い。加害性が強いのだ。
例えば、NHKは『映像の世紀』をシリーズで放送し続けている。僕は大好きな番組だ。でももし、映像に記録された人たちの肖像権やプライバシー権を侵害する可能性を理由にモザイクをかけたり、シーンをカットしたりするならば、ヒトラーの演説で熱狂するドイツ国民たちの映像は使えなくなる。ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の映像や南京攻略の報を受けて提灯行列する日本国民たちのシーンはモザイクであふれるだろう。僕の作品も全て、誰かを傷つける可能性があるから上映はできなくなる。
『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントにして 2026.03.11
脚本・監督も主演2人も素晴らしい......僕の大切な『オアシス』は奇跡を見せてくれる 2026.02.11
大評判作『ワン・バトル・アフター・アナザー』が感じさせるアメリカの「反復力」 2026.01.29
『私は確信する』が教える「確信」することの危うさ 2025.12.24
-
「外資系金融機関RM業務」語学力活かせるポジション/将来的に海外勤務の可能性あり
三井住友信託銀行株式会社
- 東京都
- 年収500万円~1,300万円
- 正社員
-
「税務マネージャー」 クライアントには年商10億円以上の外資系企業も
坂下国際税理士法人
- 東京都
- 年収600万円~1,000万円
- 正社員
-
「プロデューサー・ディレクター」外資系ファッション・スポーツブランド担当/在宅・副業可/1回面接
株式会社ルートコミュニケーションズ
- 東京都
- 年収400万円~1,000万円
- 正社員
-
「東京「渋谷」」ソリューション営業「中央監視・省エネ・改修」/外資系担当/英語力を活かす/在宅可
ジョンソンコントロールズ株式会社
- 東京都
- 年収450万円~850万円
- 正社員






