コラム

【徹底解説】DeepSeek革命のすべて

2025年02月15日(土)12時34分

また、マイクロソフトのチャットボットCopilotはGPT-4を利用しているが、『財新』の報道ではDeepSeekの推理モデルR1も使い始めているという(劉、2025)。

もっとも、Copilotにこの件について質問してみたところ、英語で尋ねたら「自分の技術については知りません」とはぐらかし、中国語で聞いたら「DeepSeekとは関係ありません」と否定した。とはいえ、DeepSeekはオープンソースであるだけに、今後いろいろなウェブサイトや機器にビルトインされて、私たちも知らず知らずのうちに使うようになるかもしれない。

DeepSeekのオープンな姿勢は、この会社が生成AI開発を科学として捉えていることを示している。科学者は先人の肩の上に立って新たな科学的成果を生み出していく。他人の貢献を自分のものだと偽ることは科学のルール違反だが、他人の科学的成果を利用することはタダである。

一方、ICの輸出規制を強化しろと息巻いているアメリカの議員たちや生成AIをめぐる競争を「米中の覇権争い」と捉える日本の新聞・テレビは、この競争を地政学的に捉えている。

地政学的な観点からいえば、中国の前進はアメリカの後退である。アメリカのICメーカーがICを輸出して中国の生成AIの前進を助けるようなことがあれば、それは利敵行為とみなされる。地政学的観点から言えば、中国の生成AIの前進を抑えることがアメリカないし西側諸国の利益となる。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

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