コラム

歴史から学ぶ「犯罪を諦めさせる建築デザイン」──「城壁都市」に最大のヒント

2026年02月17日(火)11時10分

14世紀

日本では、「城」という言葉は「要塞」を意味するが、中国語である「城」は本来「城壁に囲まれた都市」を意味する言葉で、都市住民は中国語では「城市居民」だ。平遥(中国)は、周囲6キロの街が高さ10メートルの城壁で囲まれ、城内では今も5万人が昔ながらの暮らしを営んでいる。あまりに広大なので、城壁の上を人力車が観光客を乗せて走っている。

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平遥(中国)の壁上の筆者 壁の幅は5メートル

17世紀

シルクロードのオアシス都市ヒヴァ(ウズベキスタン)は、かつて二重の城壁に囲まれていた。現存する内壁に囲まれた街イチャン・カラ(内側の城)には、ハン(王)の宮殿、モスク(礼拝所)、マドラサ(学校)、ミナレット(塔)とともに、200軒以上の古い民家が残っている。日干し煉瓦で築いた高さ10メートルの城壁が、全長2キロにわたって街を包んでいる。

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ヒヴァ(ウズベキスタン) 出典:『写真でわかる世界の防犯 ――遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館)


このように、紀元前のエリコから中世のウズベキスタンに至るまで、住民にとっての最大の恐怖は「財産を奪われ、命を落とすこと」であり、それが軍人によるものか野盗によるものかは、デザイン(入りにくく見えやすい)を決定する上では二次的な問題だった。

繰り返しになるが、海外では、「入りにくく見えやすい場所」を体現するため、城壁の整備と街の発展が相互に進んできた。この発想は、犯罪機会論として受け継がれ、現代の建築デザインに生かされている。

例えば、海外の公園は、まるで城壁都市のミニチュア版のようで、物色も接触も困難な「入りにくく見えやすい場所」になっている。子供が連れ去られるケースのほとんどは、子供がだまされて自分からついていく。フェンスに囲まれる形でゾーニングされている公園では、子供専用のスペースに入るだけで、子供も周りの大人も警戒する。そのため、だまして連れ出すことは難しい。また、壁ではなく、「中が見通せるフェンス」を採用しているので、見えやすい構造にもなっている。

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海外の公園 筆者撮影

このように、「入りにくく見えやすい場所」という、犯罪を諦めさせるデザインは工夫次第で、どこででも実現できる。「軍事」と「犯罪」が分離した現代においても、この歴史的知恵を活用し、デザインの工夫によって人と生活を守る取り組みが求められている。

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プロフィール

小宮信夫

立正大学教授(犯罪学)/社会学博士。日本人として初めてケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。「地域安全マップ」の考案者。警察庁の安全・安心まちづくり調査研究会座長、東京都の非行防止・被害防止教育委員会座長などを歴任。代表的著作は、『写真でわかる世界の防犯 ——遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館、全国学校図書館協議会選定図書)。NHK「クローズアップ現代」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビへの出演、新聞の取材(これまでの記事は1700件以上)、全国各地での講演も多数。公式ホームページはこちら。YouTube チャンネルはこちら

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