コラム

歴史から学ぶ「犯罪を諦めさせる建築デザイン」──「城壁都市」に最大のヒント

2026年02月17日(火)11時10分

8世紀

北アフリカのケロアン(チュニジア)は、7世紀に領土拡大を続けていたイスラム帝国が、北アフリカの首都として建設した都市である。メッカ、メディナ、エルサレムに次ぐイスラム教第4の聖地だ。メディナ(旧市街)を囲む城壁が最初に築かれたのは8世紀だが、その後、何度か改築され、現在の姿になったのは18世紀のことである。高さ10メートル、全長3キロの城壁に囲まれている。

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ケロアン(チュニジア) 出典:『写真でわかる世界の防犯 ――遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館)


11世紀

中世、イベリア半島の半分はイスラム教徒の支配下だった。そのため、キリスト教徒の奪回を目指すレコンキスタ(国土回復運動)の下、アビラ(スペイン)にもキリスト教徒が再入植し、イスラム教徒が追放された。このとき、イスラム教徒の再侵入を防ぐため、高さ12メートル、長さ2.5キロの城壁が築かれた。

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アビラ(スペイン) 出典:『写真でわかる世界の防犯 ――遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館)

12世紀

アンコール・ワット(カンボジア)は、12世紀前半に建設されたクメール王国の寺院都市で、東西1.5キロ、南北1.3キロの敷地が、堀と城壁に囲まれた城壁都市だ。アンコールはサンスクリット語で「都市」、ワットはクメール語で「寺院」を意味する。北側には、12世紀後半に建設された巨大都市アンコール・トムがある。トムはクメール語で「巨大」の意味で、一辺3キロの正方形の敷地が堀と城壁に囲まれている。

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アンコール・ワット(カンボジア) 出典:『写真でわかる世界の防犯 ――遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館)

13世紀

「アドリア海の真珠」と呼ばれるドブロブニク(クロアチア)は、テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のロケ地として有名で、映画「魔女の宅急便」や「紅の豚」のモデルになったとも言われている。オレンジ色の屋根と青い海に寄り添う城壁都市で、全長2キロの城壁は、最大で高さ25メートル、厚さ6メートルを誇る。

城壁の建設が始まったのは13世紀だが、オスマン帝国やベネチアの脅威を感じて、市壁の強化は17世紀まで続いた。公共建築物の4分の3が倒壊し、5000人の死者を出した地震にも、この城壁は耐え抜いた。

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ドブロブニク(クロアチア) 出典:『写真でわかる世界の防犯 ――遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館)

プロフィール

小宮信夫

立正大学教授(犯罪学)/社会学博士。日本人として初めてケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。「地域安全マップ」の考案者。警察庁の安全・安心まちづくり調査研究会座長、東京都の非行防止・被害防止教育委員会座長などを歴任。代表的著作は、『写真でわかる世界の防犯 ——遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館、全国学校図書館協議会選定図書)。NHK「クローズアップ現代」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビへの出演、新聞の取材(これまでの記事は1700件以上)、全国各地での講演も多数。公式ホームページはこちら。YouTube チャンネルはこちら

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