コラム

イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの運用方法が異なる両国、駐車場犯罪を4割減少させたのはどっち?

2025年12月09日(火)12時55分

さらに、イギリスでは、地方自治体が公共の防犯カメラを管理しているのが一般的で、ニューハム区の専従者も警察官ではなく地方自治体の職員だ。このことも、日本との大きな違いである。

その背景には、地方自治体が、「犯罪及び秩序違反法」によって、警察などと協力して、犯罪減少のための戦略を策定し、推進しなければならないこと(6条)、そして、犯罪への影響と犯罪防止の必要性に配慮して各種施策を実施しなければならないこと(17条)がある。この「犯罪及び秩序違反法」こそ、犯罪機会論を明文化したものだ。ところが、日本にはそうした法律はない。

このように、防犯カメラ先進国と言えるイギリスだが、実際、防犯カメラ設置による犯罪防止効果はあったのだろうか。最も信頼性が高いとされている研究(英国内務省調査研究252号)によると、中心市街地に設置された防犯カメラには、犯罪を4%減少させる効果があり、駐車場に設置された防犯カメラには、犯罪を41%減少させる効果があったという。

この数字の違いは、犯罪機会論の効果の違いを反映しているのだろう。つまり、犯罪機会論は「衝動的・感情的な犯罪」には弱く、「計画的・打算的な犯罪」には強いから、防犯カメラの効果も、街頭で低く、駐車場で高くなると考えられる。

一方、日本でも防犯カメラの効果を調べた事例はあるが、イギリスのように厳密に科学的な検証を経たものではないので、信頼性は必ずしも高くない。

効果検証を学問的に耐えられる形で行うためには、比較対象を設定する必要がある。例えば、A地区における防犯カメラの効果を検証するためには、A地区と地域的特徴(自然、人口、産業、交通など)やその量的・質的変化が似ているが防犯カメラを設置していないB地区を選定し、両地区の犯罪発生率の変化を比較することが必要だ。その結果、A地区の犯罪発生率の減少率の方が大きければ、防犯カメラに防犯効果があると言える。

しかし、両地区の犯罪発生率の減少率が同一であれば、防犯カメラには防犯効果が認められず、B地区の犯罪発生率の減少率の方が大きければ、防犯カメラには犯罪を増やす効果があることになる。

プロフィール

小宮信夫

立正大学教授(犯罪学)/社会学博士。日本人として初めてケンブリッジ大学大学院犯罪学研究科を修了。国連アジア極東犯罪防止研修所、法務省法務総合研究所などを経て現職。「地域安全マップ」の考案者。警察庁の安全・安心まちづくり調査研究会座長、東京都の非行防止・被害防止教育委員会座長などを歴任。代表的著作は、『写真でわかる世界の防犯 ——遺跡・デザイン・まちづくり』(小学館、全国学校図書館協議会選定図書)。NHK「クローズアップ現代」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビへの出演、新聞の取材(これまでの記事は1700件以上)、全国各地での講演も多数。公式ホームページはこちら。YouTube チャンネルはこちら

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