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『ウォーキング・デッド』が犯罪学や社会学の「素晴らしい教材」と言える理由

melissamn-Shutterstock
<人気テレビドラマシリーズ『ウォーキング・デッド』は、「社会学の縮図」だと犯罪学教授の筆者は言う>
社会学は「なんでもあり」の学問とよく言われる。そのため、テーマを絞ったつもりでも、いろいろな要素が後から絡んでくる。複雑な現代社会を的確に切り取ることは、至難の業なのである。こういった時、よく思い出されるのが「オッカムの剃刀」だ。
オッカムの剃刀とは、中世イングランドの哲学者ウィリアム・オッカムによって唱えられた原則であり、「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定すべきでない」という考え方を指す。
複雑に見える現象も、無駄な前提や要素を削ぎ落とし、より単純な説明を選び取ることによって、かえって本質に迫ることができる。単純化は決して思考を怠ることではない。むしろ、混沌をそぎ落とし、最も重要な構造を鮮やかに浮かび上がらせるための、知的な営みなのである。
この姿勢は、劇作家・小説家である井上ひさしが語った、「むずかしいことをやさしく、やさしいことをおもしろく、おもしろいことを深く」という言葉にも通じる。複雑なものを複雑なまま伝えるのではなく、単純化を通じて人々に深く届ける努力こそが、学問にも求められるのではないだろうか。
こうした点を踏まえ、筆者は、複雑な問題に直面して思考の迷路に陥ると、単純な原始社会をイメージし、そこから出口を探ることにしている。
この点で、テレビドラマシリーズ『ウォーキング・デッド』は、大変参考になる。ディストピア世界のサバイバルを描いた『ウォーキング・デッド』は、2010年から2022年まで放送され、現在もスピンオフシリーズ『ウォーキング・デッド:ダリル・ディクソン』などが放送中だ。
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