コラム

「個人の名声のため」批判をはね返し、世界最大の心臓・肺移植プログラムを設立した英外科医の生涯

2026年02月11日(水)14時57分

手術室まで付き添った故ダイアナ元皇太子妃

故ダイアナ元皇太子妃はヤクーブ医師が設立した慈善団体「チェーン・オブ・ホープ(希望の連鎖)」の理念に共感し、活動を支援した。同団体を通じてヘアフィールド病院に空輸されてきた子供たちをあたかも自分の子のように受け入れ、手術室まで付き添った。

移植患者で20年以上生存しているのは20%に過ぎない。免疫抑制による合併症があるからだ。「特異的免疫寛容という夢を実現するためより多くの研究、より多くの若者の参入、より多くのリソースが必要だ。もっと多くの命を救うにはスピードを上げなければならない」

ヤクーブ医師は自らの信条を「PPH」で表現する。「Passion(情熱)」と「Persist(持続・粘り強さ)」。人は常に「成功するはずがない」と囁く。天才である必要はない。ただ粘り強く続けることが大事だと説く。最も重要なのは「Humility(謙虚さ)」だという。

「自分は偉大だ」と思った瞬間、道を見失う

「自分は偉大だ」と思った瞬間、道を見失う。最も孤独で貧しい人々に目を向ける必要がある。何かを発見した時「自分は頂点に立った」と錯覚するかもしれないが、実際には小さな丘の上にいるだけで本当の頂点は別の場所にある。だからこそ謙虚でなければならない。

「心臓に恋をしている。心臓は感情や愛の源泉だと信じている。体の中で最も気高く、最も重要な臓器。静かに鼓動し続け、体のあらゆる臓器を支え、脳や他のすべての部位と対話し、ニーズを先取りする。なのに私たちは心臓を十分にいたわっていない」とヤクーブ医師は注意する。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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