コラム

「個人の名声のため」批判をはね返し、世界最大の心臓・肺移植プログラムを設立した英外科医の生涯

2026年02月11日(水)14時57分

僧侶が米国を訪問していた際、不運にも息子が事故に遭い脳死状態になった。彼と妻、家族は息子の臓器を移植に使用することに一切迷いはなかった。僧侶は「これが日本において宗教は問題ではないという証拠だ」と話した。

「日本の医療技術は非常に進んでおり手術は可能だ。しかし文化的な問題があって可能であるはずの件数が行われていない。移植が命を救う、命の贈り物がいかに重要かを示す報道の力が必要だ。古代に生命が同じ体で戻ってくると信じてミイラを作ったエジプトでも移植が進まない」

移植から36年経っても元気に過ごしている症例も

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取材に応じたマグティ・ヤクーブ医師(筆者撮影)

移植を始めた時「人体実験をしている」「1~2年も生きられない」「自分の名声のため」と言う人もいた。ヤクーブ医師は「患者のことを考えているだけだ」と言い返した。余命が1~2週間しかない患者が移植手術を受け、36年経っても元気に過ごしている症例もある。

ヘアフィールド病院で行われた移植手術の件数は世界のどのセンターより圧倒的に多い。名声を気にせず、人道的な観点から重篤な患者も受け入れたからだ。待機リストには常に200人の患者がいた。ギリギリのドナー(臓器提供者)も受け入れ、蘇生させて移植した。

週末に15件の心臓移植を24時間体制で行うこともあった。人類初の心臓移植を成功させた南アフリカのクリスチャン・バーナードは「君たちは私が1年かけてやる件数をこの週末だけでやってしまった」と驚いた。ヤクーブ医師は「私たちを待っている人がいるから」と答えた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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