コラム

不法移民・難民の「強制送還」が欧州各国で拡大...受け入れめぐり、タリバン政権と取引する動きも

2025年09月19日(金)16時51分
欧州各国で難民の強制送還の動きが

ロンドンで行われた反移民集会(9月13日) Jaimi Joy-Reuters

<自国から強制送還する不法移民・難民を受け入れる見返りに、アフガニスタンのタリバン政権と協力する動きが欧州で拡大。国際社会に復帰する足掛かりに?>

[ロンドン発]英国の強硬右派政党「リフォームUK(改革英国)」のナイジェル・ファラージ党首がイスラム主義組織タリバン暫定政権を含む外国政府に対し、不法移民・難民60万人の強制送還を受け入れる見返りに20億ポンド(約4000億円)を拠出するとぶち上げた。

6月末までの1年間に英国への密航者は判明分だけでも4万9341人(前年同期比27%増)にのぼり、アフガニスタン人は6589人。このうち97%が小型ボートで英仏海峡を渡ってきた。密航者を送還しようにも英国はそもそもタリバンを正当な政府として認めていない。

スターマー英政権は小型ボートで不法に渡航してきた難民をフランスに強制送還する代わりに仏北部に滞在する難民申請者の中から手続きのため英国への渡航を許可した人を受け入れる「1人送還、1人受け入れ」送還制度を取り入れたものの、どれだけ効果があるのかは未知数だ。

移民・難民問題という欧州の泣き所

YouGovの世論調査では、改革英国党支持者でも半数が、難民申請を却下されたアフガン人を送還するためタリバンに資金援助することは「容認できない」と考えていた。「容認できる」との回答は35%。成人全体では「容認できない」が61%、「容認できる」はわずか17%だった。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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