コラム

英高裁が「難民ホテル」の使用差し止め認める...宿泊施設の不足で3万人以上の難民申請者に影響

2025年08月22日(金)17時46分

EU離脱で英仏海峡を渡るボート難民が激増

内務省は難民申請者を収容・生活支援する義務を負う。最初は「一時的収容施設」(ホテル、ホステル、専用の宿泊施設)に収容し、その後「分散収容」(シェアハウスや家族向け住宅)に移す。収容対象は2019年末の4万7000人から昨年末には11万人に膨れ上がった。

欧州連合(EU)離脱でフランスとの協力関係が崩れ、小型ボートで英仏海峡を渡る難民が激増した。英オックスフォード大学移民・難民観測所によると、難民申請者1人1日当たりの費用はホテル170ポンド(3万3760円)。他の収容形態なら27ポンド(5362円)。

コスト面で6倍以上の開きがある。賃貸住宅市場は逼迫、インフレと連動して家賃は高騰し、近隣住民の反対運動も多発している。難民ホテルに依存する政策は限界に達している。旧軍施設、はしけ、客船を利用する計画もあったが実績に乏しく、英国政府の選択肢は限られている。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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