コラム

デンマーク首相が路上で殴られる...「気に入らない政治家」への襲撃が相次ぐ欧州で何が起きている?

2024年06月08日(土)17時46分

欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長も「今夜、あなたが暴行を受けたというニュースにとてもショックを受けた。欧州で私たちが信じ、闘っているすべてに反するこの卑劣な行為を非難する。あなたが強さと勇気を保てるように」とXに投稿した。

ガザ戦争で過激派テロの火種がくすぶる

欧州議会選の世論調査では、ネオ・ファシズムの流れを汲むジョルジャ・メローニ伊首相の「イタリアの同胞」や、ポーランドの「法と正義」、スウェーデン民主党が所属する会派「欧州保守改革グループ」(ECR)が8~17議席増やすとみられている。

「ドイツのための選択肢」やフランスの「国民連合」が参加する会派「アイデンティティーと民主主義」(ID)や、急進左派の会派「欧州統一左派・北方緑の左派同盟」は投票日が近づくにつれ、支持率を落としている。しかし選挙は蓋を開けてみなければ分からない。

多くのイスラム系移民を抱える欧州ではガザ戦争で過激派テロの火種がくすぶる。ロシアが攻勢に転じたウクライナ戦争も暗い影を落とす。EU域内のインフレは2.6%まで下がり、欧州中央銀行(ECB)が利下げに転換したとは言え、一時は8.1%に達したインフレの傷跡は大きい。

有罪評決を受けたドナルド・トランプ前米大統領を多くの人々が支持し続けるのも、政治的・経済的・社会的に取り残され、心がささくれ立っているからだ。彼らは救世主を求めている。ネオリベラリズムに取り憑かれた欧州と米国の民主主義に果たしてこの傷を癒やせるのか。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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