コラム

ワクチン効果で「自由への道」を邁進するイギリスの4段階ロードマップ それでも新たな死者は5万4800人に

2021年02月23日(火)18時08分

ロックダウンからの出口戦略を発表したジョンソン首相(2月22日)  REUTERS-Leon Neal

[ロンドン発]コロナワクチンの接種者が1700万人を超えたイギリスで2月22日、ボリス・ジョンソン首相が「私たちは今、自由に向かって逆戻りしない旅を続けている」と、3月8日から学校閉鎖やロックダウン(都市封鎖)を段階的に解除していく出口戦略を発表した。

スコットランドの疫学調査でワクチン接種により入院する可能性は85~94%も減ることが確認された。英インペリアル・カレッジ・ロンドンの専門家チームは、出口戦略を急げば来年6月末までに10万人以上が死亡する恐れがあると、経済再開を声高に主張する保守党内強硬派を強く牽制した。

イギリスのワクチン接種者は2月22日時点で1772万3840人(うち2回接種は62万4325人)。100人当たりの接種回数は先進国ではイスラエルの85回に次いで多い26.8回。ちなみにアメリカは18.9回、ドイツ、欧州連合(EU)平均の6回、イタリア5.8回、フランス5.5回だ。

スコットランドでは昨年12月から今年2月までに65万人が米ファイザー製ワクチン、49万人が英アストラゼネカ製ワクチンの接種を受けた。査読前論文によると、1回目の接種から4週間後の時点で入院するリスクはファイザー製で85%、アストラゼネカ製で94%も減っていた。

80歳以上では入院リスクは2種類のワクチンを平均して81%減少していたという。

4段階ロードマップ

ワクチンの有効性がイギリスでの集団予防接種でも改めて確認されたことを受け、ジョンソン首相は記者会見で4段階ロードマップを明らかにした。

■第1段階

3月8日~ 学校や大学の閉鎖解除、対面授業を再開。介護施設の入所者は、検査で陰性が確認され感染防護具を着けた定期的な訪問者1人と面会できる。ピクニックの外出は許され、家族以外の1人とだけ会える。

3月29日~ 6人または2世帯の屋外集会認める。屋外のテニスコートやバスケットボールコート再開。外出禁止を終了。

■第2段階

4月12日~ 美容院、ネイルサロン、図書館、コミュニティーセンター、動物園、テーマパーク、ドライブインシネマ再開。レストランやパブ、バーの屋外営業再開。

■第3段階

5月17日~ 30人未満の屋外集会。屋外のシネマや劇場を再開。6人または2世帯まで屋内集会認める。レストランやパブ、バーの屋内営業とホテル再開。屋内イベントは1千人。屋外イベントは4千人、座席指定は1万人。結婚式の参加者は30人まで。

■第4段階

6月21日~ 社会的距離政策を解除。7月末までにすべての成人に1回目のワクチン接種を終了。9月3日にナイトクラブ再開。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米小売売上高、7月は前月比+0.5% 新学期商戦な

ワールド

ゼレンスキー氏、米ロ首脳会談「3者協議の契機に」 

ワールド

トランプ氏、鉄鋼・半導体関税率「当初は低水準」 来

ワールド

トランプ氏「ウクライナの代理として交渉せず」、首脳
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務処理めぐり「バッドバンク」構想で大論争
  • 4
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 9
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 10
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた「復讐の技術」とは
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 6
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 9
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 10
    輸入医薬品に250%関税――狙いは薬価「引き下げ」と中…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失…
  • 6
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story