岸田首相が訴えていた「金融所得課税」の強化は、やめておいて大正解

AH86/ISTOCK
<岸田首相が「1億円の壁」の是正のために検討していた金融所得課税の強化だが、実施されていれば最大の被害者は富裕層ではなく中間層になっていた>
岸田文雄首相が所得再分配政策の一環として検討を進めていた金融所得課税の強化策について先送りを決めた。市場の反響があまりにも大きかったことが原因だが、この施策のマイナス面は株価への影響だけではない。一律に施行した場合、富裕層だけでなく中間層にも増税となる可能性が高いという欠点がある。
現在、株式などから得られる配当や売却益には一律で20%の税金がかかっている。日本の所得税は収入が多いほど税率が上がる累進課税となっており、高額所得者ほど税率が高い。だが所得が1億円を超えるような人の場合、給与所得や事業所得よりも金融所得(売却益や配当益)の比率が高くなる。この部分には20%しか税金がかからないため、実質的な税率はむしろ下がってくる。岸田氏はこの状況を「1億円の壁」と表現しており、是正について検討を進める意向を示していた。
米バイデン政権は大型財政出動の原資として超富裕層への課税強化を打ち出しており、岸田氏のプランもその流れに沿ったものと考えられる。だが、日本とアメリカとでは状況が大きく異なっており、仮にこの施策を実施しても、十分な効果を得られない可能性が高い。
有価証券の主な所有者は誰か
日本はアメリカと比較して超富裕層が圧倒的に少なく、資産100億円以上の富裕層の数は10分の1にとどまっている。株式からの配当で年間1億円以上の所得を得ている人は約8000人(申告所得ベース)、譲渡益で1億円を得ている人は約6000人しかいない。配当に対する課税を30%まで大幅増税しても、ここから得られる税収は2800億円程度にとどまる(筆者による試算)。しかも困ったことに、一律で税率を上げてしまうと、むしろ中間層以下にとって大幅な増税になってしまう可能性すらある。
世帯別の有価証券保有状況を見ると、年収2000万円以上の世帯が保有する比率は9%しかなく、年収1000万円以下の世帯が全体の約7割を占めている。一般的に有価証券というのは富裕層が保有しているというイメージがあるが、なぜイメージと実態が乖離するのだろうか。カギを握るのは年金生活に入った高齢者である。
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