コラム

バイデンの米大統領選「勝利」は、日本経済にプラスかマイナスか

2020年11月11日(水)12時01分

Mike Blake-REUTERS

<バイデン政権の誕生は日本経済にどのような影響を与え、トランプ政権の経済政策からどう変化するのか?>

米大統領選の投票が終了した。現状ではジョー・バイデン氏が有利だが、長引く可能性もある(編集部注:11月7日にバイデン候補の当選が確実となったが、トランプ大統領は結果の受け入れを拒否している)。アメリカはもちろん、日本の行く末も左右する重要な節目となるだろう。

2017年のドナルド・トランプ大統領の誕生で、アメリカの国際的な立ち位置は大きく変わった。従来のアメリカは、圧倒的な経済力と軍事力を背景に、善くも悪くも国際社会をリードしてきた。共和党と民主党で多少のスタンスの違いはあったが、フランクリン・ルーズベルト(32代、在任期間1933~45年)以降、同国が世界のリーダーとして振る舞う方針に異を唱える大統領は存在しなかった。

だが、トランプ氏はアメリカ・ファーストを掲げ、一気に自国中心主義に舵を切った。中国からの輸入に高関税を課し、事実上の貿易戦争を行うとともに、欧州や日本に対しても多国間交渉より2国間交渉を優先するなど、自由貿易主義からは距離を置く姿勢を鮮明にしている。

各国はトランプ氏の奇抜な言動もあり、アメリカの変化に驚いたが、もともとアメリカはモンロー主義(欧州との相互不干渉)を掲げていた孤立主義的な国家であることを考えると、昔の姿に戻っただけとも言える。

だが、経済のIT化やグローバル化が進み、脱炭素が国際的なコンセンサスとなりつつある今、アメリカが国際社会に背を向け、石油依存を続けることになれば、国際社会のパワーバランスが大きく崩れるのは間違いない。このままトランプ政権が続いた場合、世界は米国圏、中華圏、欧州圏の3つに分断される可能性が高く、アメリカとの同盟関係を軸に、自由貿易のメリットを最大限享受してきた日本は変化を迫られることになる。

■短期的・長期的な経済予測

トランプ氏が勝利した場合、減税を軸にした経済政策が続き、中国との貿易戦争も激化する可能性が高い。短期的には現状維持なので株価にはプラスだろうが、中国との分断が進むので、中国を経由した日本の対米輸出はさらに減少する。日本の製造業という観点では、トランプ政権の継続はマイナス面が大きい。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story