コラム

お国柄が表れる各国の新型コロナ経済対策 日本の特徴とは?

2020年04月28日(火)10時45分

アメリカは金額のインパクトと対応の素早さが際立っていた KEVIN LAMARQUEーREUTERS

<金額勝負であとは個人の自助努力に任せるアメリカ、もともと手厚い社会保障を活用する欧州。では日本の対策はどうなのか>

今回のコロナ危機では、経済支援に関する各国の価値観の違いが浮き彫りになった。戦いが長期化することは確実なので、今後の対策について冷静に議論するためにも、各国の違いについて理解を深めておくことは重要だろう。

日本を除く多くの国では、厳しい外出規制を敷いており、経済活動が著しく抑制されている。この状況に対し、金額の規模で対処したのはアメリカだった。同国の経済対策は2兆ドル(約220兆円)という大規模なもので、GDPの約1割に相当する。この中には国民1人当たり1200ドル(子供は500ドル)の給付金や、中小企業に対する休業補償などが含まれる。

アメリカは基本的に苛烈な競争社会で、国民の約1割が医療保険に加入していない。一般的には福祉が手薄な国と思われているが、実際はそうでもなく、メディケイド(低所得者医療保険制度)、食料配給券制度(旧フードスタンプ)、子育て世帯向けの粉ミルク支援策、賃貸住宅補助(いわゆるセクション8)、給食の無料券など、実は日本よりも手厚い福祉制度が整っている。

だが政府が手取り足取り面倒を見るというよりは、制度の利用についても自助努力というスタンスで、今回も当座の生活をカバーする資金を提供したので、後は自力で生活を立て直すことを求めているように見える。

アメリカやドイツは既に支払いを実施

一方、社会保障が手厚い欧州は、既存の制度を有効活用した支援が行われている。ドイツは休業や時短勤務の所得補償制度を使って労働者の所得補償を実施し、この枠組みに入らない中小零細事業者やフリーランスに対しては、自己申告制で数十万円の支援金を即座に支払った。ちなみにアメリカも対応は素早く、4月前半の段階で既に資金の支払いが実施されている。

フランスもドイツに近い。日本ではフランスのことを単に「自由の国」とイメージする人も多いが、これは少々偏った見方といってよい。フランスは基本的に革命国家であり、今の政府(第五共和制)は革命当時と同一ではないがその精神をしっかり引き継いでおり、社会主義的な色彩が極めて濃い。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アップル、関税で今四半期9億ドルコスト増 1─3月

ビジネス

米国株式市場=上昇、ダウ・S&P8連騰 マイクロソ

ビジネス

加藤財務相、為替はベセント財務長官との間で協議 先

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story