コラム

トランプが...ではなく「米国は」もともと分断と対立の国

2017年02月07日(火)15時21分

米国の民主主義は対立を経て成熟してきた

米国は当初、白人同士での人種差別(メジャーなアングロ・サクソンに対して、マイノリティであるイタリア系、アイルランド系という図式)が深刻だった。対立が解消された現在でも、人材登用がオープンな公務員にはアイルランド系やイタリア系が多いなど、かつての時代の名残りがある。また米国の映画やドラマなどを見るとよく分かるが、今でも多少の差別意識は残っている。

その後、対立の図式は黒人と白人にシフトし、公民権運動を経て黒人と白人の融和が進んだ。現在ではそれがヒスパニック系やイスラム教徒との対立にシフトしていると考えれば、それほど驚くにはあたらない。

このほか米国は、太平洋戦争時の日系人強制収容、フーバーFBI長官による"暗黒捜査"(大統領を含む自国の政治家に対して諜報活動を行っていた)、マッカーシー上院議員による赤狩り(共産党員とそのシンパを公職から追放した)など、極端な方向に振れる時代があり、こうした人権抑圧的な政策に対する反発から民主主義が発展してきたという側面もある。

【参考記事】トランプの人種差別政策が日本に向けられる日

個人的には、多くの対立を経て民主主義を確立してきた歴史を踏まえ、米国が新しい融和社会を構築してくれることを願っているが、あくまでそれを決めるのは米国人である。わたしたち日本人は、米国社会には両面があり、常に対立で揺れ動いてきた国だという冷静な認識を持つ必要があるだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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