コラム

ヘリコプターマネー論の前に、戦後日本のハイパーインフレを思い出せ

2016年07月26日(火)16時02分

 よく知られているように、現在の日本は人口減少が進んでおり、特に労働者の中核をなす若年層人口の減少が著しい。日本の労働力人口の総数は、過去10年間であまり変わっていないのだが、25~35歳の労働力人口は同じ期間で2割も減少した。日本が不景気であるにもかかわらず人手不足なのは、基本的に労働力が不足しているからである。

 また日本企業のビジネスモデルは変化しておらず、設備の更新も遅れている。経済産業省が2013年に行った調査では、10年以上経過した老朽設備を保有している企業は6割に達する。1994年の調査と比較すると、設備の保有期間は大幅に長期化した。現在の日本は古い設備ばかりとなり、それをオペレーションする若年層労働者も少ないというのが現状なのだ。こうした供給制限が経済成長に与える影響は決して無視できない。

 終戦直後とそのまま比較するのは適切ではないかもしれないが、マネーが市中に大量に溢れ、供給面で制限がかかっているという点では同じである。こうした状況下で際限のない資金供給が続いた場合、眠っていたマネーが突如動き始める可能性はゼロではない。

 戦後のハイパーインフレは、ある日、突然発生した。ほとんどのケースにおいて、ハイパーインフレに目立った前兆はない。数字の上では危ないといわれていても、しばらくは何も起こらないのが普通である。インフレで大変な事態になると皆が気付くのは、インフレになったその時である。あえていうなら、最初に兆候を示す可能性が高いのは為替ということになるだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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