コラム

消費税再延期も財政出動も意味なし? サミットでハシゴを外された日本

2016年05月31日(火)06時12分

 クルーグマン氏の言動の是非はともかく、安倍氏がメルケル氏を説得しようと考えていることや、一般的に見て、その実現は困難であろうことが、安倍氏の訪欧前に広く知れ渡ってしまったのである。

米国が再び利上げモード突入で、日本はますます動きづらく

 結局、日本は各国の同意を得られないままに、サミットでは国内向けのパフォーマンスを最優先した。その挙句に「リーマンショック級の危機」とかなり唐突な発言を行ったのである。

 サミットの場で、首脳が国内政治向けのパフォーマンスを行うというのは時折見られる光景であり、殊更にそれが問題視されるわけではない。だが、今回、安倍氏が財政出動に強くこだわり続け、世界経済の情勢について「リーマンショック前と似た状況」とまで表現したのは、少々まずかったかもしれない。

 日本は諸外国との認識に大きな隔たりが存在することを考慮する余裕がなくなっており、消費税の再延期と大型の財政出動しか頭にないことが、市場に知れ渡ってしまったからである。

 米国は大統領選挙においてトランプ候補が当選する可能性が現実味を帯びてきたことに加え、足元では良好な経済指標が続いていることもあり、急速に利上げに傾いている。米国の経済指標が良好なのは事実だが、ホンネのところは、大統領選挙の前に利上げを実施しておき、その後の金融政策の自由度を拡大しておきたいというところだろう。

 そうなってくると、日本がサプライズ的な政策を打ち出すことはあまり望ましいことではなく、実際、米国のルー財務長官は日本側の機動的な動きにクギを刺すような発言も行っている。

 安倍氏は今週にも消費税の再延期を表明する見通しであり、近く、比較的規模の大きい経済対策を打ち出す可能性が高い。だが、このような八方塞がりの状況では、市場は大きく反応しない可能性が高いだろう。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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