コラム

女王と首相、「両方の親」を失いつつあるイギリス

2022年06月14日(火)18時20分

だが議員たちは、次回選挙で自分に勝利をもたらす見込みのないリーダーには背を向けるもの。3回連続して総選挙で保守党を勝利に導いたサッチャーが1990年に党首の座を引きずり降ろされたのも、このパターンだった。

単純に議員たちは、首相官邸での相次ぐパーティーと、発覚後のジョンソンの否定やごまかしのせいで、彼の評判は地に落ちたと考えている。国民からはもう信用もされなければ好かれもしないだろう。

全体として見ると、ジョンソンは公約したことを成し遂げ(何年も二の足を踏んでいたブレグジットを実現した)、2つの非常に困難な状況におおむねうまく対処している(パンデミックとウクライナ危機)だけに、この状況は哀れだ。

イギリスはワクチン接種を上手に進め、イギリス経済は回復している。ウクライナがジョンソンを重要な同盟相手と考えているのも間違いない。だから、これが政策や実績の話だったら、ジョンソンの有権者基盤も議員の支持も万全なはずだ。でも、問われているのは彼の人格であり、彼はルールを破って嘘をついたと見なされている。

そんなわけで、僕たちイギリス人は2人のリーダーを失おうとしているかもしれない。2つの状況は全く異なるが、それぞれに違った意味で、悲劇だ。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

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