コラム

今振り返りたい「日本でゼロコロナ」提言の危うさ

2022年10月15日(土)13時50分

「正義感」以上に危ういもの

仮に実現したとしよう。それはコロナ対策としては良くても、社会・経済の自由は著しく制限される。岩田提言は「新型コロナ」を中心に据えれば、素晴らしく効率的に思える。抜本的な医療支援が必要な途上国や、ここで称賛されている中国のような権威主義国家ならばトップダウンで「やる」か「やらないか」の2択で動ける。

だが、日本で本当に実現を目指すためには何が必要か。少なくないハードルがあるはずだが、それが十分に検討されているとはおよそ言えない。そのような提案であっても、もっと「自由を制限してもいい」と賛同する声が強まったのは、単に当時の菅義偉政権を批判したい以上の意味はなかったのだろう。

政権批判を目的に、「自由の制限」を肯定する。私はここに専門家の正義感以上の危うさを感じる。ちなみにウィズコロナ路線の欧米では経済成長が続き、ゼロコロナ路線の中国は大きなダメージを受けている。専門家が、専門外の領域まで語るとき、受け止める側は変に反応せず、「話半分」で聞くくらいがちょうどいいのかもしれない。

プロフィール

石戸 諭

(いしど・さとる)
記者/ノンフィクションライター。1984年生まれ、東京都出身。立命館大学卒業後、毎日新聞などを経て2018 年に独立。本誌の特集「百田尚樹現象」で2020年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を、月刊文藝春秋掲載の「『自粛警察』の正体──小市民が弾圧者に変わるとき」で2021年のPEPジャーナリズム大賞受賞。著書に『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)、『ルポ 百田尚樹現象――愛国ポピュリズムの現在地』(小学館)、『ニュースの未来』 (光文社新書)など

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