コラム

肝心なところが分からない「菅首相」立身出世本の不毛

2020年10月06日(火)14時25分

拉致問題に熱心に取り組みたいという気持ちは分かるが、では「政治は結果」だと豪語した安倍政権で結果を残せなかった責任をどう感じているのか。せっかくここまで菅に接近しながら見えてくるのは、永田町の権力闘争が好きな、古典的な「政治屋」でしかない。

都合のいい話ばかりをつなぎ合わせれば本書のように描ける。だが、つまるところ本書は「菅義偉」という人間をこう見てくれたらうれしいという願望が反映された本であり、肝心なところは何も分からない。もしかしたら、それは「政治屋」としての本分を見せたいという作家の芸なのかもしれないが......。

<本誌2020年9月29日号掲載>

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プロフィール

石戸 諭

(いしど・さとる)
記者/ノンフィクションライター。1984年生まれ、東京都出身。立命館大学卒業後、毎日新聞などを経て2018 年に独立。本誌の特集「百田尚樹現象」で2020年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を、月刊文藝春秋掲載の「『自粛警察』の正体──小市民が弾圧者に変わるとき」で2021年のPEPジャーナリズム大賞受賞。著書に『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)、『ルポ 百田尚樹現象――愛国ポピュリズムの現在地』(小学館)、『ニュースの未来』 (光文社新書)など

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