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米EUに迫る「離婚」の足音...脅しを掛け合う両者の「バズーカ砲」とは?
ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長(左)とドナルド・トランプ米大統領(2025年7月27日、スコットランド・ターンベリー) Kaua209-Shutterstock
<トランプ関税をめぐり、米EUの「バズーカ砲」による脅し合いが始まった。世界のGDP43%を占める巨人たちの衝突は、世界をどこへ向かわせるのか>
アメリカと欧州連合(EU)の関係が、トランプ関税をめぐって悪化の一途をたどっている。
EUでは、日本より2カ月ほど早い2025年7月に、スコットランドのターンベリーで、ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長とドナルド・トランプ大統領が合意に至った。
しかし、日本が同年9月に赤沢亮正経済再生担当大臣がトランプ大統領と大筋合意した事項を守っているのに対し、EUでは何も進んでいない。なぜなら、政治合意を米EUの貿易協定として発効するには欧州議会の承認が必要であり、議会が採決そのものを拒否して延期を重ねているためだ。
アメリカ側の忍耐は限界に達していると言われている。ジェミソン・グリア米通商代表部(USTR)代表は今年3月の記者会見で「EUは我々との貿易協定に関して、本来果たすべき義務をほぼゼロパーセントしか履行していない」と述べた。
目下、3月末に欧州議会で採決を行うか否かが焦点となっており、米欧の間で要人の往来が活発化している。
最初から欧州議会は、このようなトップ外交による政治合意に不満だった。同議会の国際貿易委員会のトップ、ベルンド・ランゲ委員長は、通常のEUの手続きの外で、加盟国からの委任がなく、議会の監視もなく、異例であり、民主的な統制を損なうと考えていた。
それでも、フォンデアライエン委員長はトランプ大統領との合意を擁護していた。彼女の属する欧州議会の最大会派である、中道右派の「欧州人民党グループ(EPP)」もそうだった。
産業界は不確実性を嫌う。日本の自民党に似ている欧州人民党は、産業界の声を汲み取って、とにかく早く関税率を定めることを望んでいたと言われている。フリードリヒ・メルツ独首相もこの方向性を支持していた。
しかし、この姿勢に深刻な打撃を与える大事件が起きてしまった。
「グリーンランド購入と関税」の脅しが撤回された理由
それは今年1月17日に起きた。トランプ大統領が、アメリカがグリーンランドを購入できるようになるまで、欧州8カ国からの輸入品に10%の関税をかけると表明したのだ。
この驚きをどう説明したらよいのだろう。もし某大国のトップが日本に「日本の◯◯島を売らなければ、日本に多額の関税をかける」と言ったら──と想像すると、ヨーロッパ人の驚きが分かるだろうか。この発言は、将来「あの時歴史が動いた」と言われてもおかしくないほどの、大きな事件だったと思う。
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