コラム

ロシアが仕掛ける「影の戦争」──進化するハイブリッド脅威と日本の脆弱性

2026年02月19日(木)14時22分

変化は単なる量的拡大にとどまらない。たとえば2022年以降、ロシアが関与した破壊工作は、関与の痕跡を極力残さない形へと洗練された。アトリビューション(攻撃主体の特定)を困難にする方向へと変化しているのである。

進化したハイブリッド脅威

イギリスのシンクタンクInstitute for Strategic Dialogue(ISD)は、EU27か国で発生したハイブリッド・インシデントを分析したレポート「Europe's Other Battlefields: Foreign Hybrid Threats in the EU」の中で、いくつかの重要な傾向を指摘している。対象はEUだが、日本にも通じるものは多い。

・複合化

情報作戦やサイバー攻撃とキネティック作戦が組み合わさる事例が顕著に増加した。分析対象の半数以上に物理的活動が含まれていた。これは2022年以前との大きな違いであり、ドローンの活用が象徴的である。

・相手国内から協力者を動員する手法の拡大

国外から暗号化通信を用いて国内協力者に指示を出すケースが増えている。背景にはロシア人スパイへの取り締まり強化と、匿名通信環境の発達がある。この方式は同時にアトリビューションを困難にする。この手口は、日本で話題となった闇バイトと構造的に類似している。

・個別対処の限界

ハイブリッド脅威は複数手段の組み合わせとして展開されるため、単一領域の分析では全体像を把握できない。多くの破壊活動は情報操作と連動していた。

・戦略目的の明確化

目標はヨーロッパの弱体化と不安定化であり、当面はロシアが中心だが、将来的には中国やイランも関与を拡大する可能性がある。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

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