コラム

世界に広がる虚無主義的暴力過激派(NVE)...ポスト・イデオロギー時代の新たな脅威

2026年01月25日(日)10時52分

日本にNVEは存在するのか?

日本に住んでいると、NVEのような存在はにわかには信じられないと思う。しかし、日本でもNVE、あるいは類似のグループが増える可能性は低くない。そう考える理由は、世界各地で起きていて、日本だけで起きない理由が見当たらないからだ。

しかし、いまのところ日本でNVEらしい事件が起きていないのも事実だ(正確には2021年頃複数の事件はあったが、その後はないようだ)。なぜまだ日本で起きていないのだろうかと考えると、非常に個人的な感触で恐縮だが、BreakingDownという格闘技大会の存在が少なからずあるような気がした。

BreakingDownは1分間最強を競う格闘技の大会で、プロと素人が同じリングで戦う。日本全国の喧嘩自慢や前科のある者など、さまざまな背景を持つ人間が集ってくる。BreakingDownのオーディションを通り、本戦に出場できれば一挙にネットの有名人になれる可能性があり、そこで勝てば、その知名度はさらに高まる。

有名人になることで、自身のYouTubeなどネット活動へのアクセスが増え、スポンサーもつきやすくなって収入にもつながるし、飲食店などのビジネスであれば客が増える。さらに主宰者である朝倉未来などの影響もあって、そこには一定の美学がある。単に強いだけでは人気は出ないのだ。

さまざまな面でNVEに重なるものがあるような気がするのだが、BreakingDownはそれを表の世界で解放することに成功している。そして、日本でのNVEに似た事件は起きていたが、BreakingDownが広く世の中に認知されるようになった2022年以降は起きていない。

いずれにしても、世界的な脅威となっているNVEは日本で広がる可能性が高く、そのため、日本においてもNVEの研究を行い、対策を考えておく必要があるのは間違いない。

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プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

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